赤也成り代わり

□2人目のマネージャー
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ああ、なんて愚かなのかな、



僕は俺になって呟いた。俺になっているのに僕が出ているのはもうきっと色んな事がドウデモイイと感じているからだろう、なんて、ね。この世は現実以外の何物でもないのに夢としてみて、現との境が理解出来ていない女を俺は僕は嘲笑った。目の前にいるは愚かな女。それに対峙するのは愚かな精市サンと俺と僕。昼休み、僕たちが屋上で昼食を取っていれば、突然扉が開き、愛川ヒメカが入ったかと思うと、つかつかと目の前まで歩いてきたのである。










「・・・・・・何か用か?ヒメカ」


「こんな所にいたんだね。私赤也の事探したんだよ?」




ミーハーな態度は改めたらしいがどうやら止めなかったらしい名前呼び。
眉間に皺を寄せた事に彼女は気付かず、喋り続けていた。





「あのね、私赤也達の部活偶然見たんだけど、その時テニス一生懸命してる赤也達見てサポートしたいなって思って。マネージャーになったの!」
















―――ピシリ、





そんな効果音が付きそうな固まった空気。横にいる精市サンの空気が険しくなった。











「平部員とかも頑張ってて、支えたいなって、」

「――愛川さん。」





精市サンの声が遮る。無表情になっている精市サンに、ゾクリと寒気が走った。彼の様々な負の感情が混じり合った表情、それに声。
この精市精市サンが僕は好きだ。
いつの間にか、口角が上がる。






「、えっと、誰ですかぁ?」



わざとらしい声。精市サンが愛川とちゃんと言葉を交わすのが初めてだからなのか、期待の籠もった視線で、そして媚びたような声で笑顔を作る女を、精市サンは睨んでいた。






「知ってるだろうに何故聞くんだい?
・・・前テニス部部長、幸村だよ。それより、」





そこで一旦言葉を切る。相当苛ついているらしい。





「―――それより、俺も赤也も君にマネージャーなんて頼んでないし、了承した覚えもないんだけど。」




「あ!それなら大丈夫ですよ!ちゃーんと、先生に許可は貰いました!」








隣の苛ついた無表情を俺は見つめた後、笑った。















「精市サン精市サン。たしか、琴葉が平部員まで手が回らないって言ってませんでしたっけ?」




「、ああ、そういえば、そうだったね。」








うっすらと、精市サンも笑った。言いたい事は伝わったようだ。
目の前の愛川は分かっていないが。













「―――・・・じゃあ、愛川さんは平部員のマネージャー、よろしくね。もうレギュラー専属マネージャーは居るから。」
























「・・・・・・え?」





「だーかーらーぁ、俺らにはもういんだよ。マネージャー。

それに、いいだろ?さっきヒメカ平部員も支えたいって言ってたんだから。」





ありえない、



そう思っているような顔。
きっと琴葉の事は知らないんだろう。














その歪んだ顔を、もっと、もっと歪めてみたくなった。













「死にたくなったような顔、なんてのも良いかもねぇ。」







無理矢理屋上から愛川を追い出した後、僕は精市サンに対して呟いた。




「いいかもね、ソレ」




精市サンも、薄ら笑いを浮かべた。








「―――じゃ、潰そうよ。アイツ」





手加減はしない。これからアイツは少しずつ、堕ちていくだけ。






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