赤也成り代わり
□落ちて堕ちて、
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嘘、嘘嘘嘘。
俺を構成するモノ、すべて。
俺が好きな先輩達も、俺が好きだと言ってきたモノも、俺が嫌いだと言ってきたモノも、
―――すべてすべて、うそ。
だってホントウを見せるのはとっても怖い事だから。俺は臆病。そうする事でしか自分を守れない、可哀想な独りぼっち。嘘ばっかりで周りを固めて、嘘ばっかりで取り繕って、嘘ばっかりでみんなを騙してきた、
そんな、おれも、ぼくも。
何でこんな弱いのかな、なぁんて、
「・・・・・・そう、思ってるんすよ、ずーっと」
2人だけの視聴覚室。精市サンと、僕。
あの3人には、一応話しても問題ない程度に色々とバラした。
と、いっても。
ほとんど話していない。きっとあの感情に敏感な先輩達はその事を気付いているだろう。けれど、それ以上踏み込んでこなかった。それはきっと、関係が崩れていくのは嫌だから。ああ、なんて愚かなのかな。僕だったら容赦しないで聞いていくのに。そんな中途半端なこと、して欲しくなかった。
「・・・自分に、まだそんな感情が生きてるなんてすっごい驚きなんだよね。先輩達に、嫌われたくない、だなんて。自分に失望するよ」
「俺は知ってたけどね。赤也はなんだかんだ言っても俺達が好きなんだよ。それも、きっと狂いたくなるほどにね。」
「赤也は、何処までも人間らしい人間なんじゃないの?欲望に忠実で、でも矛盾ばかり抱えて生きてる。」
「知らなかったかい?俺はね、そんな赤也だから好きになっていたんだよ。」
そう言う、精市サン。
原作とは違った、狂気を含んだような表情。もしかして、僕は俺は。
僕が居たから彼の存在が歪んだんじゃなくて、
彼が居たから僕の存在が歪んでいるんだ。
僕は、答えを分かっていながら、彼に1つの質問をした。
「精市サンは、僕を何処まで知って、何処まで堕とすつもりなの?」
かれはこたえた。
「―――どこまでも。」
その答えに、僕は笑った。彼は、また口を開いた。
「じゃあ、君は、俺を何処まで知っていて、何処まで堕ちさせるつもりなの?」
僕は、答えた。
「―――貴方が堕ち続けるところまで」
つまるところ、僕たちは、
お互いを道連れにし続けて、
見えない奥底に、堕ちていく
.