SPN
□I see the light(S/D)
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「あっ、そうだ。この狩りが終わったら寄りたい所があるんだけど、いい?」
間欠泉のごとく、吹き出した血の向こうでサムの声がした。
「今ちょっと忙しいんだけど」
悪魔を切りつけ、血のシャワーを浴びながらディーンが目をやると、サムはディーンが相対していた悪魔の首を振り向きざま、勢いよく切り落としたところだった。
「それにお前、折角、ベガスの近くまで来たんだからカジノ行こうって言ったら問答無用で却下だったじゃん」
「だってディーンは歯止めが利かなくなるんだもん。いつもの違法賭博とは違うんだよ、ベガスは。すぐ黒服の大男に掴まって裏でエッチな目に遭っちゃうよ、ディーンなんか」
「黒服じゃない大男が傍にいるから大丈夫だよ」
「黒服じゃない大男だって、兄貴をエッチな目に遭わせてやろうといつも虎視眈々だけど、ともかくギャンブルはダメ」
「むぅ。俺の要望は却下しといて、お前のはなんだよ」
「デートのお誘い」
宙を舞う生首を背に、血塗れで大ぶりのナイフを持ち、もじもじと言う様は実にミスマッチで妙な迫力があった。いつもなら何をしていたって可愛いと思える最愛の弟だが、今言わなければ気が済まなかったのだろうか、と、ディーンは少したじろいだ。
「こんなとこでデートのお誘いなんかするからお前、草食系とか言われんだよ」
「僕を草食系だと思ってるのはディーンくらいだよ、多分。お願い、ディーン。見せたいとこがあるんだ。カジノより断然良いところだよ」
「……いいけど。次の予定もねえし」
「ありがとう」
わあ、と顔をほころばせ、首を飛ばした悪魔の胴体を突き飛ばし、サムはディーンを抱きしめた。首が転がっていく様を見ながら、ムードの重要性を教えなければならない、とディーンは真顔になった。
色々と後始末の末、朝日をバックに現場から引き上げた兄弟は、殆ど寝ながらという感じの状態でなんとかシャワーを浴び、モーテルのベッドへ沈んだ。ぐっすり寝て、ディーンが次に目を覚ましたのは翌日の昼過ぎだった。行きたいところがあるというから、てっきり早めに叩き起こされるだろうと思っていたのに、そんな事は全くなかった。
隣のベッドに腰かけていた弟は、寝起きのディーンの顔を眺め、ゆったりと朝の挨拶をした。
「おそよう、愛しのお兄さま」
「悪ぃ。めちゃくちゃ寝ちまった」
「いいんだ。連れて行きたいイベントは夜に始まるしね。まあ、そろそろ起きてもらおうかと思ってたとこだったけど。さ、出る支度をしてね」