SPN

□shine to darkness
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「ハッピーバースデイ、ディーン!」

夕日が沈み、逢魔が時。

満面の笑顔で言うジャックに、車の整備から戻ってきたディーンは、はにかんで笑った。

「サンキュな、ジャック」

汚れた手袋を外し、わしわしと頭を撫でてくるディーンに、ジャックも歓声を上げた。はしゃいでピョンピョンと飛び跳ねている。

「誕生日は何をしてくれるんだ?」
「僕ちゃんと知ってるよ。誕生日にはつけヒゲと赤い服を着て煙突からサプライズするんだ!」

「おーい誰だ中途半端に吹き込んだのは」
「それで、誕生日の人の顔面にチョコレートを投げつけながら「独立万歳!」って言いつつ皆で花火するの」

「誰も説明しなかったからこうなっているのでは」
「サプライズだったらディーンに言っちゃダメなんじゃないの?」

サムに指摘され、ジャックは慌てて口を押さえた。

「おい俺はやだぞ、チョコ投げられんのは。サム、訂正しておいてくれよ」
「腕白でもいい、のびのびと育ってほしい」
「えっ訂正しないつもり!?」
「ディ、ディーン! 今のは聞かなかった事にしてね! 内緒なんだ! 僕とサムはディナーの用意をしてくるから、キャス、ディーンのお世話をよろしくね」
「任された」
「ガキじゃねえんだぞこっちは」

いくつだと思ってんだ、とぶちぶち言いながら、ダイニングの椅子に腰かけるディーン。私はビールを渡しながら傍らに座った。

「ディナーが楽しみだな」

私がそう言うと、彼は苦笑いを浮かべた。

「ジャックはサムと一緒にケーキまで焼くこだわりようで、」
「愛されてんなあ、俺は」

「ディーンの目が緑だからと緑一色のウェディングケーキめいた名状しがたき何かが今、キッチンに鎮座している」
「お前何をもって「楽しみ」って言ったの?」

ビールをあおったディーンは、何故か、やけくそ気味に問う。

「で? お前からのプレゼントは?」

私は重々しく頷いてから、言い訳を述べる事にした。

「それなんだが、私から君にあげられるものなど、そんなに無く、毎年悩んでしまう。年を追うごとに渡せるものにも限界がきてしまって困る。またアルバイトで金銭を稼ぎ、君に何かプレゼントを、と考えたが、良い婚約指輪が見つからなかった」
「今のは聞かなかった事にする。ジャックのサプライズ下手は遺伝だな、きっと」
「それにどうせならば誕生日以外で渡したいと思い直したんだ。渡せるならばもっとロマンティックな時にする。というわけで、ここのところずっと悩んでいたのだが、誕生日当日がきてしまったので、ひとまずこれを君に」
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