SPN

□I'm on cloud 9(S/D)
1ページ/3ページ


「ディーン、勝負しよう」

狩りから帰宅後、モーテルの冷たいシャワーからあがったら自分の着替えが消えていた。文句を言おうと顔を向けたディーンの鼻先で、サムは唐突にそう言った。

ディーンは水滴をぽたぽた垂らしながら、

「お前はいつだってそうだ。自分に有利なように場を整えてから勝負を持ちかけやがる」
「タオルは残してあげたでしょ、弟の優しさをかみしめてね」

掴んだタオルから何かが転がり落ちた。拾い上げてみればそれはチョコレートでできたイースターエッグだ。寄ってきた弟が体を拭いてくれ始めたので、ディーンはしぶしぶとそれを開けてみた。中には文字が書かれた紙片が折り畳まれて入っていた。

「……『人情家(時として情に厚すぎる)』、何これ」
「ディーンの良いところ。もうすぐイースターだからね、たまには僕達もそういうの、楽しんでもいいんじゃないかと思ったんだ。
シャワー浴びてる間に、全部で十個作って部屋の中に隠したから探して」

「これが勝負?」
「そう。全部見つかるまで、三十分ごとに僕が用意した服を着せていきますので」

「は? 服をくれるなら別に探さなくても、」

言いかけたディーンの前に出てきたのは女の子が着そうな、ふわふわでモコモコの、ピンクと白の横ストライプなルームウェア。

「ひえっ」
「イースターだからね」

ジップパーカータイプの上衣には、うさみみフードがついていて、サムはそれを手で見せびらかし、微笑んだ。

「他の着替えは全部ランドリーに突っ込んでおいたから安心して」
「勝負の意味は!? じゃあお前の今着てる服をよこせよぉ!」

服をもぎ取ろうとしたディーンを抑えながら、サムは時計を見た。

「もう三分経ったよ」

ニコニコ言う弟に、ぶすっと頬を膨らませ、盛大に舌打ちしてブツクサ言いながらも、仕方なくディーンは室内を探し始めた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ