SPN
□I'm on cloud 9(S/D)
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「ディーン、勝負しよう」
狩りから帰宅後、モーテルの冷たいシャワーからあがったら自分の着替えが消えていた。文句を言おうと顔を向けたディーンの鼻先で、サムは唐突にそう言った。
ディーンは水滴をぽたぽた垂らしながら、
「お前はいつだってそうだ。自分に有利なように場を整えてから勝負を持ちかけやがる」
「タオルは残してあげたでしょ、弟の優しさをかみしめてね」
掴んだタオルから何かが転がり落ちた。拾い上げてみればそれはチョコレートでできたイースターエッグだ。寄ってきた弟が体を拭いてくれ始めたので、ディーンはしぶしぶとそれを開けてみた。中には文字が書かれた紙片が折り畳まれて入っていた。
「……『人情家(時として情に厚すぎる)』、何これ」
「ディーンの良いところ。もうすぐイースターだからね、たまには僕達もそういうの、楽しんでもいいんじゃないかと思ったんだ。
シャワー浴びてる間に、全部で十個作って部屋の中に隠したから探して」
「これが勝負?」
「そう。全部見つかるまで、三十分ごとに僕が用意した服を着せていきますので」
「は? 服をくれるなら別に探さなくても、」
言いかけたディーンの前に出てきたのは女の子が着そうな、ふわふわでモコモコの、ピンクと白の横ストライプなルームウェア。
「ひえっ」
「イースターだからね」
ジップパーカータイプの上衣には、うさみみフードがついていて、サムはそれを手で見せびらかし、微笑んだ。
「他の着替えは全部ランドリーに突っ込んでおいたから安心して」
「勝負の意味は!? じゃあお前の今着てる服をよこせよぉ!」
服をもぎ取ろうとしたディーンを抑えながら、サムは時計を見た。
「もう三分経ったよ」
ニコニコ言う弟に、ぶすっと頬を膨らませ、盛大に舌打ちしてブツクサ言いながらも、仕方なくディーンは室内を探し始めた。