SPN

□Pushing*Dean
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『さて、
物語を始めようか―。』

今この瞬間、クール・ド・クールの街で少年、ディーン・スミスは9歳と27週6日と3分だった。彼は犬を飼っていた。名前はインパラ、3歳と2時間6日と5時間9分。車種名を名前にしてしまったセンス皆無の父・ジョンに文句も言わず、ディーンはこの犬を大層可愛がっていた。

しかし、ここで時が止まり、思いもよらぬ悲劇が起きた。

インパラはその名に劣らぬ早さで車道に飛び出て、やってきた大型トラックによってディーンの目の前で轢かれてしまったのだ。嘆きよりも驚きが少年の脳を支配していた。空を舞ってゆっくりと地面に堕ちたインパラを見下ろし、昼寝しているのを起こそうとするかのように、彼はインパラに触れた。

すると驚くことに、バチッとした静電気が彼とインパラの間に巻き起こった途端、轢かれて死んだはずのインパラは元気よく起き上がって走り出した!

この瞬間、ディーンは自分が他の子と違う事を悟った。更に言えば、他のどの人間とも。ディーンは死んだものに触れて、生き返らせる事ができるのだ。

この能力は、彼が授かった贈り物だったが、贈り主は不明。箱も無ければ、取扱説明書も無く、メーカーの保証書も無く、ただ、与えられただけ。利用規約はすぐには判らなかったし、今すぐ気になる事でもなかった。
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