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□天使に祝福を(CD)
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日中は彼の弟があまり歓迎してくれないので、私が彼に会うのは必然的に夜となる。今日も二人で彼の車に腰をかけ、月を見ながら会話をする。

「そういや、お前はいつなんだ?誕生日」

彼はいつも容易く私に問いを投げかけるが、それらの殆どはいつも私にとって難問に近い。
「誕生日、という概念はない。私は……気づいたら、『在った』存在だから。わからない」
「俺にもさっぱり判らねぇ説明だ」
「君が気になるのなら、私の誕生日は君と、」
「君と出会った日にする、とか寒い事言うんじゃねぇぞ」
「…………」
「うわっ、マジかよ!」

しかし、実際に君と出会った事で私は生まれた、と思っている。君を見守り、君を知り、君を愛しく思う為に生まれたのだと思った。
けれど、それは違うのだろうか。

「じゃあ今日にしようぜ」
「何?」
彼の思考は鈍い私よりも緩やかに回る。
困惑の顔を向けた時にはネクタイを引っ張って彼は笑っていた。
「Hey.タクシー。今すぐどっかの教会まで連れて行け」
私はタクシーでは無いと言おうとしたが、彼がますます喉元を引っ張るのでやむをえず、従った。

彼の機嫌だけは損ねたくなかったから、私は何を考えているかも判らない彼が掴む手を握り、意識を集中した。
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