Project&Request
□Day
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彼の吐いた息が白く、綿雪のようにこちらへ漂ってきたので思わず手で掴もうと試みた。
「何やってんだ」
「東洋の仙人は霞を食べて生きるらしい。私も一応は天に住まう一員だ」
「だからお前も掴めるだろうって?ばかだな、お前は仙人でもなけりゃ、それも霞じゃないんだぞ」
ディーンは喉の奥でククッと笑って寒そうに身を屈めた。
「君の体温で生きられるとしたら、これ以上なく幸福だろうと思ったんだ」
吐いた息が私の方へ流れないように、両手で口を覆って息を吐き、手のひらを暖める。
その動作はただの照れ隠しだと知っていたので、その手をとって私の服のポケットへ押しこんだ。
「こうしてこの中で指の先まで掴んでいれば、寒さなど感じない」
「確かにぬくいけど、恥ずかしいんだっつの!冬になるといつもやろうとするよな、お前」
抜け出そうともがく手を、しっかりと中へ押しこみながら私は歩き出した。
攻防は十分以上続いたが、足で私を蹴ったら彼の気が済んだようで、それ以降の抵抗は止んだ。
「…お前がこうしてないと寒そうだから仕方ない。俺の体温を分けてやる」
ありがたいと思え、と言って、彼はきゅっと私の手を握り直した。
「そうか、ありがとう。とうぶん寒いと思うからそのままでいてほしい」
じっと見つめたら口を尖らせてぷい、と横を向いてしまった。