Song SPN2on5
□けもの道
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僕と、誰だか判らないクソガキの体が入れ替わった。
気づいた時には既に遅く、僕は今イライラと鏡を見つめていた。こうしている間にも、兄貴の傍には僕じゃない『誰か』がいる。
そう考えるだけで気が気じゃなくなり、繋がらない電話を鳴らし続けた。
ディーン、ディーン、そいつは僕じゃない。
僕の顔をしているけれど、横にいるのは僕じゃない!鏡の中で受話器を握る、弱々しいガキを睨めば向こうも睨みかえしてきた。
手を伸ばせば その髪に
爪を磨げば 届きそう
鏡面に叩きつけた拳は脆く、血の赤が鏡像のガキの髪から顔へと、垂れ落ちて行く。殺してやりたい。僕のふりして兄貴に触ってるこいつを。
ねじるように 捕まえて
飛び散るまで 目をあけて
そうだ、この身体を滅ぼしてしまえばどうにかなるんじゃないかとも考えたけど、意識は僕だし、相手にとっては元の姿に戻れなくなるだけだから死ぬのは僕。
思考が廻らない……余程切羽詰まっているな、と自分でも思った。
なるほどな、ルシファーの器になったらこれ以上の嫌な気分を味わうってわけだ。
良い予行練習……だなんて、思うわけないだろ。受話器を見下ろして呟く。
兄貴だったらわかるよな。
わかるでしょう?中身が違うくらい。
早く気づいてくれ。
そればかりを思ってコールを続けた。