SPN

□Live well, Laugh often, Love much.(S/Dサンプル)
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『Spring is here!』

その日、僕らはワイオミングのシャイアン近郊で、一軒の小さな家を調べていた。

つい最近、持ち主の老婆が亡くなって空き家になったその家は親族の手によって近々、取り壊す事になっていた。しかし、いざ業者が手をつけようとすると小さな事故が多発した。何かに足をとられて転ぶ、いつの間にか体に切り傷ができている、腹をくだしたり、急に閉まったドアにぶつかる。

一つ一つは大した事がなくとも、そういう事を十人以上が経験するとやはり怖がる者も出てきた。老婆の霊が成仏できずにさまよっていて、家を壊そうとする者に呪いをかけているのでは、という話がハンター間のローカルネットワークに持ち込まれ、ちょうど近くのネブラスカで狩りを終えて手が空いていた僕らに調査の依頼が入ったのだった。

「まあ、よくある話だ」

僕は家の中を探索しながら言った。それこそ数えきれない程こなしてきた類のものである。素性を調べて埋葬された墓へ行き、掘って、焼いて、また埋める。それだけ……と思いきや、それは既に別のハンターがやったそうだ。しかし、小さな事故は続いているという。手に持ったEMFがピクリとも反応しないのを眺めながら、僕は頭を掻いた。

「どういう事なんだろうね、ディーン」

ディーンはキッチンの窓辺に置かれた小さな皿とフレッシュミルク用のミルクピッチャーを眺めていた。

「死んだばあさんって、もしかしてイギリス人か?」

僕は資料に目を落とし、そうだと肯定した。

「名前は、」
「いやその情報は多分、今は必要ない。そうだな……ペットは飼っていなかったんじゃないか?」

「……そうだよ、ずいぶん前、夫に先立たれて長い事、独り身だった。どうしたの、何か知ってるの?」
「とりあえず、何日かここに泊まってみよう」

返答の代わりにそんな提案が飛んできた。

「えー……気が引けるなあ。原因が分からない所に長居したら何されるか判らないよ。ねえ、何かピンときた事でもあるの? 教えてってば」
「まだ確証はないが、思い当たるものがある」

「ホントに? 何なの、名探偵」

まだ勘だから、と言うディーンは、空の皿を見つめて笑った。
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