SPN
□O Come, All Ye Faithful!
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「うわ、ロウィーナ! 何でここに!」
買い物から帰ってきたサムの驚いた声に、思わず顔を上げた。
「だめだめ、よそみしない! まきぐそおちる!」
小さな手が私の頬を掴んで引き戻した。クリームの袋を握る私の手を支え、一緒に白いラインが引かれていく。
「いちばんよくできたから、このケーキはふたりじめ」
「皆には内緒でか、ディーン」
イルミネーションにも劣らない瞳がパチパチと瞬いて、私だけにイタズラな顔を向けた。思わず私も微笑みを返す。そうだな、皆が寝静まった頃、改めて二人きりでキリストの生誕を祝おう。用意したプレゼントを君が喜んでくれるといいんだが。
窓の外では細雪が降ってきたというのに、白く曇る外に見える人影は未だに中へ入ってこない。うろうろと何往復もしているシルエットにしびれを切らし、何か言ってやろうと再びよそ見をしたら、頬にキスが落ちた。
「サミーたちに、おはなししてくる。サンタきたって!」
頬を押さえて固まったままの私から、逃げるように駆けていくかと思いきや、不意打ちめいたとびきりのスマイルで振り返り、ディーンが言った。
「メリークリスマス、キャス!」
君からのプレゼントは唐突で衝撃的すぎる。何を用意しても君に勝てる気がしない。クリームが手の熱で溶けてしまいそうになっていた。ついに観念したような、やけくそ気味のノックが扉を叩く音を聞きながら、緩みに緩む顔を必死で抑えつける。君が戻るまでに平静を装えていますように。