SPN

□Castiel‘sReturnSongsxxx(サンプル)
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Track3.

「今日はカンザス州フリントヒルズ周辺に来ていまーす」
「旅レポ?」

バイウェイの一つを走る車は、整備されている為か、はたまた運転者の技術によるものか、あまり揺れる事なく進む。

「クソ、今日は暑いな」

フロントガラスに映るのは田園地帯の広々とした風景。トールグラスの緑が風に揺れ、さわさわと泳ぐ大草原。

「窓を開けなよ、風が入るから」

助手席のサムが窓を開け、爽やかな風が吹きこんできた。青臭い草の匂い、雨の降った後の少し湿った空気。ガラスに反射して映る君は楽しそうにハンドルを握っていて、テープで音楽をかけた。君がくれたテープにも入っていた音が車内から窓の外へと抜けていった。

石灰岩と火打石で構成されたなだらかな丘をのぼった車は、ごう、と強い風に車体を一度震わせた。風に身をさらされた後、広がった景色は見事だった。その時、任務中にも関わらず、共有されて送られてくる視界の半分に映るそれに思わず本体の私も足を止めた。

どこまでも続くトールグラスが地平線に緑の絨毯を敷く。ひとふさの草が風に舞い上がれば、底のない青い空が果てしなく広がった。

草の大海を航海する黒の舟は波に乗って世界の果てまででも行けそうだった。

サムが気持ちよさそうに車窓から少し顔を出して目をつむり、君はその横顔を見て目を細めて笑った。牧牛の群れが道を渡ろうとしていて、車は一時停止する。

群れを追い立てながら男が手を上げ、君も挨拶を返した。のろのろと牛達が通り過ぎるのを待つ。実に心地よい、ゆったりとした時間が流れていた。 
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