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守護天使はケアロボットの夢を見るか(C/D)
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※四月馬鹿とロボットカッコカリ(兄視点)
「ディーン、悲しいお知らせがあるんだ」
夜。
さーて寝よう寝ようとアジト内の俺の部屋に入ったら、俺に許可も得ずに、キャスが侵入していた。
「もー!折角、プライベート空間を手に入れたってのに不法侵入されてちゃ意味ねえだろがー!」
「君が君だけの部屋を手に入れた事は、私にとっても君にとっても喜ばしい事だと思うのだが……サムに邪魔される懸念がないので」
「別にお前と二人きりになれて嬉しくなんかねーし」
「君は嘘が下手なのに息をするように嘘をつく」
「嘘じゃないっつの。それより何でお前、キャシンヘイかぶって俺の部屋にいるんだよ」
キャスは何故か、以前、俺の手によって生まれた最新鋭アーマースーツ『キャシンヘイ・マークV』をかぶって突っ立っていた。
狩りの為に作ったこのスーツ。しかし実戦導入には至らなかった。出来は良いのだが水に弱く、衝撃にも弱い。しかしコスパの良さは最強である。材料がスーパーとかですぐ入手できるから。出来は良いんだ、何せ世紀のマッドサイエンティストでもある俺が作ったんだから。
紙装甲なのは扱いが下手なキャスが悪い。
ともかく、そんなキャシンヘイをかぶったキャスは、
「悲しいお知らせだ。悪の科学者・サムの手によりキャシンヘイと同化させられてしまった。私は今日からロボットとして生きねばならない」
「すげー、サムってお前を仮面ライダーにできたんだ」
ダンボールの塊は、うつむき加減で哀愁を漂わせている。なんとなく悲しげ。
「悲しい事だが今日から私は君のケアロボットに転身」
「……最近、ディズニーの映画見ただろ?」
ちょっとだけ腕を動かしつつ、キャスは言う。
「君の疲れた心と体を私が癒してあげよう……そう思ってここで待機していた」
何だコイツ……と半眼で見ていた俺だったが、そういえば今日は四月馬鹿だ。ちょっと嘘ついてみようと頑張ってみたのかもしれない。
「ふーん、癒してくれるのか」
「そうだ、テディベアの代わりだってできる」
言うと俺に近寄ってきて抱きしめてくれようとしたようだった。しかし俺の作ったアーム装甲は紙と言えど直線直角であって、曲線などは描けない。従って俺の背に腕など廻るわけもなく、のたのたと両腕はボディ部分にぶつかっていた。
「くっ…(ガッ)ぐっ…(ガツッ)」
「これじゃー、俺が寄り添ってるだけじゃん?」
お前にはガッカリだなとキャシンヘイの胸に頬をくっつけながら言ってやったら、すぽーん!とアーム装甲を両方ふっとばし、露出したトレンチの腕がギュッと俺の背に廻った。
「おい、俺の渾身の作品を勝手にキャストオフしやがって!」
「心配ない、今のは追加機能のロケットパンチだ。武器を捨てる代わりに私は君を腕に抱く事を選んだ」
しゃあしゃあとそんな事を言ってやがるので、ベッドに勢いよく押し倒してやれば、ダンボールはわたわたと足を動かした。
「ディーン、いきなり何をするんだ」
「間抜けな俺だけのロボット。今、俺はキャスの顔が見たいのに見れなくて悲しいんだ。癒してくれよ」
胸に顔を寄せながら、俺は言う。
「俺だけのテディベアは硬すぎる」
頭部を撫でながら。
「悲しいなあ。これ外れないなんて。俺、今ものすごく唇が寂しいんだけどなあ。慰めてもらいたいのに」
切ない話だなあ、なんて言ってやれば、
トレンチを着た腕が頭部を掴み、スポンと外した。
「…………」
そこには、何か強い誘惑と戦ってるような変な顔したキャスがいた。しばらく黙ってたかと思ったら、
「……こ、これはロケットヘッドだ。外して投げたり濡れたら新しい顔と交換できるんだ。だから、製作者である君はいつでもこれを外して私のメンテナンスができる」
今一生懸命考えましたとばかりにそんな事を言った。
「この嘘つきめ」
俺は罵ってやったが、キャシンヘイには聞こえなかったらしい。寂しい唇をさっそく慰めようと近寄ってくる粗忽なロボットには、ロボット三原則をもう一度叩き込んでやらなきゃだ。