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兄貴の新兵器9
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※ダイソン並みの吸引力によって作られるサンドイッチ/in賢人のアジト(サム視点)

「ただい……ま、」

買い物から戻ってリビングに入ったら、

「……」

ビーズクッションの上で無表情で転がってる兄貴と、

「……」

そのまた上にまたがるようにして乗っかり、横たわっているキャスを発見した。

「……(スチャッ」
「……無言で銃を構えないでくれないか。まず話を聞いてほしい」

「何を?レ○プ目の兄貴の上でまたがってる不審者に何を聞けって?」
「やましい事は何もない」

上に乗っかったまま、いけしゃあしゃあと首を左右に振るキャス。

「それ絶対入ってるよね!?入ってるだろ早くどけ!」


〜間〜


「私が来た時、既にディーンはこの状態だった」

容疑者は否認しながら説明した。

「私も何があったのかと聞いたのだが、通販で購入したものだという。先ほど届いたので使い心地を試そうとしたところ、思った以上に体にフィットしたらしい」

「……本編での俺の扱いが過酷すぎるからこのソファで癒されてたとこにキャスが乗っかってきたんだ……」

被害者はやっとの事でそう呟くと、再びダウン状態になってしまった。

「乗っかったのは自発的だったと証言がとれたけど」
「それは認めよう。何しろ、ディーンが仰向けで両手を広げ、このソファで私を迎えていたんだ。その思いに応えなければと思うのは当たり前だ。思うにこれは設置式の新兵器」

なんだかんだと見苦しい言い訳を続けるキャスをひっぺがし、説教を続けた僕だったが、

「…………」

ちらっと見れば、そこには大の字でソファに埋もれるようにして僕らをぼんやり見上げてるディーンが。

「…………」

心なしか、その開いた両手は受け入れ態勢に見えて、僕らは沈黙した。

ぼけーっとしているディーンから漂うマイナスイオン。

それを見ていると、ふらふら〜っと……

「って、コラー!」

ふらふらっと、再びキャスがディーンに乗っかって横たわった。

「おもい」

ディーンが、かろうじてそんな事を言う。何か可愛い。

「思うに……このソファ……いや、ディーンを中心にして何らかの磁場が発生している……ディーンは私をダメにする……」
「キャスがダメなのはいつもの事じゃないか」

もう、だらりと脱力しているキャスを見ていたら、もはや抗う事はできなかった。

僕も吸い寄せられるようにしてその上にのしかかった。

「「おもい」」

ああ、本当だ。

死んだような目をして転がる兄貴が、何の抵抗もなく腕の中に納まっているのである。そして背後には体の形にフィットするクッション。

(間に邪魔者さえいなければ)確かにこのソファは僕をダメにするだろう……。

「確かに設置式の罠かも。いや、沼?」
「ずぶずぶしずんでくかんじ」
「ああ……君に受け止めてもらえている事の、何たる幸福感。何物にも代えがたい至上の幸せ」

そんなわけで、しばらく僕らは兄貴によってもたらされた新兵器、僕らをダメにする兄貴(ドッキング・ソファ)で無力化されてしまうのだった。


※この魔性の兵器は、その後やってきたケビンにあえなく没収されたという。
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