SPN

□Brother friday(サンプル)
3ページ/3ページ

※巻末特別付録に蝙蝠猫がついています

でかせぎひしょさん編

「おまえとは、たいとーなダチでありたい。そうおもっていたのはホントなんだけど、」

苦渋の決断とばかりに、小さな握りこぶしをふりながら、ディーンは言った。

「やむをえず、からだをうりにきた」

その時、どこか見覚えのある幼児を前にして、ブルース・ウェインは、社会的な死を覚悟した。

既に底の果てまで落ちている自分の素行についての評判は、最早これ以上は落ちるまい。そう思っていた頃もありました…と遠い目になる。

社員が行き交う、社のロビーは今や、水を打ったように静まり返り、ざわ…ざわ…と、ひそひそ声が飛び交っている。底にはまだ下があった。

「……とりあえず、僕の部屋で詳しく聞こう」




会議は、いつも以上に白熱していた。

出してくるだろうと思われた議題は後回しに、質問ばかりされるのでブルースは防戦一方だ。飛びかう意見に、ブルースは眉間を抑えた。

「私はメールで経緯を説明したはずだ」
「ごくろうさまです、あめちゃんどうぞ」

「彼に対する詮索は禁止、深い意味はない」
「コーヒーだめっていわれたの。そちゃですが」

「いつもより職場の意識が緩んでいるように思うが、君達は何をやっているんだ?……は? 彼が職場を廻って差し入れを? いや聞いていないが。触るな、と言ったはずだ。何故私に連絡しない」
「うちのこ、ワルぶってるけどホントはいいこなの、なかよくしてあげてね」

「…………?」

長いテーブルの上座に座っているブルースは、合間合間に差しはさまれる違和感に首を傾げた。  

顔を上げると、フォックスが入口の方を指さして、あわあわと何かジェスチャーをしていた。中腰になって今まで見えていなかった方を眺めると。

「ディ……!?」

細く開いた入口から、ディーンが小さな台車を引いて歩いてきていた。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ