SPN
□Brother friday(サンプル)
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※巻末特別付録に蝙蝠猫がついています
でかせぎひしょさん編
「おまえとは、たいとーなダチでありたい。そうおもっていたのはホントなんだけど、」
苦渋の決断とばかりに、小さな握りこぶしをふりながら、ディーンは言った。
「やむをえず、からだをうりにきた」
その時、どこか見覚えのある幼児を前にして、ブルース・ウェインは、社会的な死を覚悟した。
既に底の果てまで落ちている自分の素行についての評判は、最早これ以上は落ちるまい。そう思っていた頃もありました…と遠い目になる。
社員が行き交う、社のロビーは今や、水を打ったように静まり返り、ざわ…ざわ…と、ひそひそ声が飛び交っている。底にはまだ下があった。
「……とりあえず、僕の部屋で詳しく聞こう」
*
会議は、いつも以上に白熱していた。
出してくるだろうと思われた議題は後回しに、質問ばかりされるのでブルースは防戦一方だ。飛びかう意見に、ブルースは眉間を抑えた。
「私はメールで経緯を説明したはずだ」
「ごくろうさまです、あめちゃんどうぞ」
「彼に対する詮索は禁止、深い意味はない」
「コーヒーだめっていわれたの。そちゃですが」
「いつもより職場の意識が緩んでいるように思うが、君達は何をやっているんだ?……は? 彼が職場を廻って差し入れを? いや聞いていないが。触るな、と言ったはずだ。何故私に連絡しない」
「うちのこ、ワルぶってるけどホントはいいこなの、なかよくしてあげてね」
「…………?」
長いテーブルの上座に座っているブルースは、合間合間に差しはさまれる違和感に首を傾げた。
顔を上げると、フォックスが入口の方を指さして、あわあわと何かジェスチャーをしていた。中腰になって今まで見えていなかった方を眺めると。
「ディ……!?」
細く開いた入口から、ディーンが小さな台車を引いて歩いてきていた。