SPN
□Brother friday(サンプル)
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【サムの記録・夏のあにき】から抜粋
突然だが、今日の僕らは海に来ていた。
夏休みと言えば海、山、川のアウトドアや、田舎の祖父母に会いに行ったりするものだ。というわけで、ボビーの家に行こう。兄貴はそんな独自の理論で僕らを引っぱったのだった。
ボビーの家へ行く道中で、海を通った僕達は、少し遊んでからシンガーさんちに行くつもりだ。
しかし、マリン模様の小さな水兵さんは、その水着があまりスタイリッシュには見えないと些かご機嫌斜めである。ほっぺたぷっくり。
ラッシュガードの裾を引っぱり、
「これじゃ、おんなのこにモテない」
さっきからパーカーに連絡先を突っこまれまくっているキャスと、女の子に声をかけるバルサザールを、うらめしげに見つめるのだった。
「僕にはモテてるよ?」
「そんなの、いつものことでしょ?」
今更、なんだこいつ…的な目で見られた。
「やつらだけ、イイおもいさせない」
そう言うと、赤と黒のボーダーなうきわを腰に装着し、波打ち際で女の子達に囲まれているバルサザールへと、赤ちゃんペンギンみたいな歩き方でペタペタと近寄っていく。
そうして、大変愛らしい声で呼びかけた。
「ダディ!」
あっ……(察し)。
*
ふと、僕の視線に気づいたのか見上げると、
「しょーがねーなー。はい。こっち、サミーの」
ボビーの片膝に移動して、空いた方を手で示す。
お膝だっこしてもらえって!?
「なにしてんの、はやく」
「いや、別にそういう意味で見てたわけじゃ」
あんたの膝を破壊しようと思ってはいない、とボビーに視線をやると、
「…………」
手に持ったマシュマロを所在なさげにクルクルしながら、無言。反抗の意思すら感じられず、どうしたの、どっかで頭打った!? と問いただしたくなったが、僕も大概、空気に流される男。
恐る恐る、椅子のひじ掛けに体重を乗せ、重心はひじ掛けのまま、そっと片足だけボビーの膝に乗った。いい歳こいて何やってんだろ、僕。