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尊い君のもの(CD)
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※ミシャ誕2012記念でした(兄視点)
今日は(俺が勝手に決めた)キャスの誕生日。バーガータワーが出来上がり、サムがトイレに向かった。
しばらく出てこないで、なんか中でじたばたと音がする。
「さてはチャックで挟んだんだろ?ばーか」
と笑っていたら、水の流れる音と共にバンッと扉を開けて立っていたのは…サムじゃなくてキャスだった。
「!?」
「やあ、ディーン」
開いた個室の中に、サムの姿は無かった。
「やあって、おま…えっ、もしかして流しちゃったの、サム!?どうしよう、下水辿れば拾えるかな」
「何を言っているんだ、ディーン。こんな所に彼を流せばつっかえて便器が大変な事になる。できるものならやってみたいものだが」
真顔で言うな。
「彼には数時間ほど、天界のガーデンへ行ってもらった。今日の私はお誕生日様なのだ、お誕生日様の命令は絶対だと言ったところ、快く了承してくれた」
快くにしちゃ、抵抗するようなもがく音がしたけどなぁ。
キャスはとてとて近づいてくると、俺を抱き上げて膝の上に下ろし、バーガータワーを頬張った。
キャスは何か違うゲームと勘違いしてる魔法の言葉(お誕生日様の命令は絶対)を駆使して、俺にバーガーを口まで持ってこさせる係をやらせてご満悦。
もりもり食べながら、ぬいぐるみを抱えた子供みたいに俺をぎゅーっとして、口の中の物を消化したらひな鳥みたいにピヨピヨと口を開けて無言で待っている。
一メートル程あったタワーを一時間もしないうちにあらかた消化し、今度は俺を抱えてベッドへ転がった。
魔法の言葉により抱き枕役を仰せつかった俺だったが、
「もっとこう、なんか…ないのか?誕生日に何かしてもらう事。これだといつもとあんま変わんないだろ」
いや、いつも食っちゃ寝ばっかしてるわけじゃないけど。
すぐそばにある感情を宿さない瞳がきょとんと瞬くのを見た。無欲すぎるのも困りもんだって。
「お前の欲しい物が判らないから、食いもん以外は用意するの難しいし。具体的に何か、言ってみろよ」
「前にも言わなかっただろうか?君がいるだけで私は満ち足りている」
君といられるだけで良い。それが既に私への贈り物になっているとか言いながら再び抱きしめてくるので、
「それじゃ俺が困るの!」
抱き枕役を放棄して、タワーの残骸を切り崩していたらぬっと横に立ち、
「そのペンは君の物か?」
机の上に転がっていた俺のペンを指して言う。
そうだと答えたら、
「ではこれをもらいたい」
「おい」
面倒くさくなってそこらの物を適当に選んだな!と怒ろうとした口にペンを当てて俺を黙らせた後、
「君の持ち物は、どんな物でも私にとっては聖遺物にも優る物となるんだ」
「とんでもねぇ冒涜になるって、それ!」
「君の物をいつも持ち歩けるのはとても幸福だ」
口角をほんの少し上げて、きらきらした目で見てこられては、
「…いいよ、もってけよ」
と言うしかなかった。膝に再び俺を乗せてベッドへ座り、五ドルもしなかった大量生産のペンをためつすがめつ、手で転がしていじっている姿が、何かに似ている……。
あ、アレだ。赤ん坊がおもちゃを夢中でいじってる感じだ。そう思うとそうとしか見えなくなってニヤニヤを抑えるのに必死。
よくアンナが『キャスを見てると母性本能をくすぐられるのよね』って言っているが、なんとなくその気持ちが判った気がした。
でも、膝の上の俺を放って夢中でペンをくるくる回したりしているキャスを見てるだけってのは退屈だ。
こっち向けって、むにょーっとほっぺた引っぱってやったら、もちみたいに伸びたその口は確かに微笑んでいた。
※ガーデンからサムを戻すのを忘れたキャスが朝になってから気づき、慌てて呼びもどすも兄とキャスが一つのベッドで寝ているのを見た途端、サムがブチ切れて大ゲンカしたそうです。