Project&Request
□Night
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「旅をしてて、たまたま立ち寄ったとこでキレイな物を見つけて、その思い出をサムと共有できるのはすごく…すごく、嬉しいなあ」
なんでもない声で、そんな事を言った。
普段そんな事、恥ずかしがって口に出さないもんだからビックリして顔をまじまじと見ていたら、ハッと口を押さえた兄が僕の顔を見返した。
どうも口に出すつもりなんか無かったようだ。
途端に顔を赤くして、握ったままだった手を振り払って、何故かいきなり僕のダッフルコートをバッと開けた。
サイズが大きめのしか無かったけど妥協して買ったそれの中へ、兄貴はすっぽりと入ると後ろ手にボタンを閉めて籠城した。
そして、コートの中で僕の体に直に向き合って、ぎゅうと服を握りしめながら言うのだ。
「…今のは忘れてください」
はあああああ兄貴かわいいよおおおおお!
「コートから出てよキュン死にしそうだよ」
「ちょっと、今はムリ」
顔を押さえてまるまってる気配がして、可愛くて可愛くて、ぎゅーっとコートごと抱きしめた。
「本音がポロリしちゃったの?」
「違う、別にいつもそんな事思ってるわけじゃないし…ホントたまたま…ムードで言っちゃったっていう、だから、違うの!忘れろって言ってんだろ!」
「忘れられるわけないだろ、僕と同じような事思ってくれてたって知ったら」
「え?お前も思ってたの?」
僕、こんなに幸せでいいんだろうか。
目の前にはキラキラ輝くキャンドルのシンプルで美しい光景。
手の中にはぽかぽか暖かい最愛の人の体温。
「幸せで死んじゃいそうだ」
「ばかじゃないの」
ああ、幸せだ。
雪までちらほら降ってきた中で僕はコートを抱えながら丸まった。
「これからもいろんな事を共有しようよ、兄貴。それで全てが落ちついた頃、ああこんな事もあったなぁって思い返せる時にもさ、隣で一緒にいてほしいんだ。兄貴は僕の隣で笑いながら、『あの時のお前は…』ってその時思ってた事を僕に話してくれるんだ」
それってとっても素敵だと思わないか?
僕が聞いたら、コートの中でひときわ温かくなった体温は、ぎゅーっと僕を抱きしめてくれたのだった。
☆Merry christmas!☆