Project&Request
□Day
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「ひゃあ!?」
きっと寒いのだろう。
揉みこむように、挟んだ耳たぶを口に咥え、咀嚼する要領で動かした。
はむ、と挟んだそれの柔らかさは、彼の唇と同じくらいやわい感触だった。
「ななな、何いきなり、う、やぁ…やめろ、耳は弱いんだ!」
「弱い?体が悪いというような意味か?なら尚の事、冷やしたままではよくない」
あむあむと唇で挟み、擦る度に、彼は小さく飛び上がり、身をすくめた。
「んあ、あう…ひ…ひゃめろぉ!」
何故かもっと赤くなった耳を間近で見ている間も無く、彼はどんと私を突き飛ばした。
ポケットの中で大人しくしていた手まで引き抜いて、私から距離をとる。
「わけわかんねえよ、いきなり何だっての!」
「寒いのだろうと思ったから暖めようと思っただけだ。だが私の手はオーナメントと君の手を掴んでいた事で両方塞がっていたから、唇を」
「だからってこんな、人だかりの中やるか普通!?」
「暗い夜道をぴかぴかの君の耳を頼りにして歩きたくはない」
「ばかばかばか、ばーか!」
今度は頬どころか鼻の先まで赤くして彼がかんしゃくを起こしたので、私はオーナメントをいったんポケットへ入れ、両手で彼の頬を掴んだ。
「今度こそ、鼻まで赤い。赤鼻のディーン、寒いのなら暖めるからじっとしていてくれ」
ぎゅう、と頬を掴んで、鼻に唇を近づけたらアッパーが顎をとらえて繰り出された。
半歩下がって彼を見たら、自分で両頬を挟んで赤い顔を隠しながら、目をぎゅっとつむって言った。
「ひ、ひ、人のいないとこでやれ!」
「人がいなければやっていいのか」
聞くなバカ、と言いながら彼は私の手をガッと掴む。引っぱられ、もみの木の前でやっと彼は振り返り、ふてくされた顔をしながら言った。
「願い事は?」
彼の服のポケットに、大事そうにしまわれたハートを見やった。
私の願いなど、聞くまでもないだろうに。
そう言ったら、じゃあ俺の願いごとも聞くまでもないんだから聞くな、と彼は言った。
「たぶんお前とおんなじだ」
そう呟いた彼の頬に、たまらずキスを落としてしまったのだった。