Project&Request

□Day
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「私の想いを試したつもりか?食物でも構わないがどうせなら後に残る物がいい」
「後に残る物なんかいらねぇよ」

離れていく時、辛いだけだ″

その言葉の意味を考えているうちに彼はポケットの中の手を引き、歩き出した。

私がもたついている間に彼が買ったホットワインを二人で飲みながら広場の中央へ赴くと、とても大きなもみの木が電飾でデコレーションされてそびえ立っていた。

近づくと、木のオーナメントが電飾の間、間に飾られているのが判る。

「これはまだ未完成なんだ」

すぐ傍でオーナメントを売っていた屋台の店主が言った。しかし寂しいという印象は受けなかった。むしろ、八割方、飾りつけは終わっている。充分に賑やかかつ眩しいツリーだ。

「オーナメントを飾ってくれる人がいる限り、これは未完成なのさ。来た人にここで好きな形のを買ってもらって、飾ってもらっているよ。どうかな、お二人さんも。記念に何か買って願いを込めて飾れば、もしかしたらサンタさんが君達の元に訪れて願いを叶えてくれるかもしれないよ」

本来そういった行事ではないはずだが、私は彼を見た。

「サンタさんには縁遠いんだよな。でも俺達もツリーの飾りつけの協力するか、キャス」
「君がやりたいのならば」

家や鳥、プレゼントボックス、聖人や天使。削られたもみの木で作られているオーナメントは実に様々な形が売られていた。

それを二人して覗きこむように品定めする。

「こんなにあっちゃ、どれにするか迷っちまうな。酒かセクシーな女の子のオーナメントがあれば即決なんだけど」
「そんな不埒な形は無いと思う」

ふと屋台に飾られていた一つが目に入り、指し示す。


「この男の子の形のオーナメントだが、なんとなく君に似ている」
「そうかぁ?じゃあ、その隣の天使はお前かな」

並んで飾られていたのは、短髪の男の子(と思われる)と、オーナメントによくある天使の形をした物だった。

天使の方は、衣装の部分が他の物よりも長く切り出され、まるでコートのようだ。この天使はちょっと他より不格好になってしまったのだと店主が言った。
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