SPN
□2nd Anniversary
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あんまりからかいすぎるのもしのびなく、片手でボートの空気栓を掴み、キャスが波に気をとられている隙に力を入れて一気に空気を抜いた。
「キャス、大丈夫だ、サメどっかいったわー!」
縮めたボートをポケットへ海中で押しこむのはかなりの難易度だったが、キャスの所まで戻る頃にはなんとかしまえた。キャスはいつものぼんやり顔で、うきわと俺を見比べてから、
「退治したのか」
そう呟いて水面を指さした。そこには、
「……あー……」
押しこんだはずのサメの皮(空気抜けボート)が俺のポケットから脱出し、大海原を自由に航海してしまっていた。
こりゃ怒るだろうなとバツの悪い顔で振り向いたら、なんとキャスはキラキラした目で俺を見ていた。
「バルサザールはすごい」
「何褒めてんだ、よせって」
「これも退治できるだろうか、お願いしたい」
これ″とうきわを指して退治″を期待されても。
「いや、お前ろくに泳げねぇだろ?これ退治しちまったら」
「時には新しい事に挑戦するというのも己の向上に繋がる」
言いながらキャスはじっと浜辺で立ち往生しているディーンを見た。あー、そういう事?
察した俺は、ディーンには見えないようにこそこそと、うきわの空気をほんの少しだけ残してキャスに掴まさせてからディーンに声を上げた。
「ディーン!やべー、キャスが溺れてらー」
「まだ溺れていないが」
「水面をばちゃばちゃ叩いて顔だけ出してろ、判ったな」
「…………」
無表情でやるとそれ、血気迫る雰囲気が出るなぁ。
「俺も足つった、だからキャスを頼む〜」
「マジで溺れてんの!?」
待ってろ今行く!と飛びこんできた阿呆を恋する少女の目で心待ちに見ている友人に呆れ、俺は潜水してその場を脱出したのだった。
素早く泳いで砂浜へ出ると、かつがれたと気づいたディーンが早々にキャスを叱っていた。
そういや、残りの二人はどこに行ったのかと見回せば、地獄のランナウェイをやっている所だった。
トリックスターが下着を振り回して走り、その後をサムが追いかけているというだけで何となく何が起きたのかが判ってしまう自分がちょっと嫌…。