SPN
□2nd Anniversary
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〜俺とキャスとサメ(バルサザール)〜
「見ろ、キャス!バルサザールがサメに食われちまう!」
嫉妬に包まれたエロ大魔人から逃れ逃れて入水中。浜辺から聞こえてきた声に呼ばれた気がして、ゴムボートへ体重を預けたまま、沈んでいた意識を浮上させた。
まさかのジョーズ体験かと周囲を見渡せば、ゴムボート(またの名をシャークボート)が漂っていただけだった。
愛きょうのあるサメの顔(ポリエステル製)としばし見つめ合い、もしかしてコレの事言ってんの?と声を上げようとしたら浜辺のディーンはニヤニヤしていた。
横では崩れかけの砂山を前にバケツを持ったキャスが立っている。
なんの事はない、あいつらの遊び道具がバケツから俺に移っただけだ。
そんなわけで俺はサメを尾びれが出るくらいまでに水面へ沈めてみる。お前の顔はメルヘンだからいくらキャスでもバレちまうっての。
「っべー、これ死んだわー超近いわー逃げらんねー」
適当に手で水面を叩きながら、溺れてる感も出してみる。俺って名役者。
「バルサザール!」
にわかに慌てたキャスが、バケツを放り投げておろおろし出した(ただし顔には出ない)。
実際、海に入った事なんかキャスには無いと思う。でもおっかなびっくり、ばしゃばしゃ入ってきた姿を見てちょっと感動。あらやだあの子いつの間に、あんなたくましくなったの?
ディーンがうきわを掴んできて、
「キャス、これを使え!」
投げられたうきわをキャッチしたキャスは、それをビート板代わりに握りながらひたすら前進しようとしたが、波に押され、流され、うきわは一向に進まない。
「何故だろう、前進している気がしない」
しかも真顔でそんな事を言うもんだから、俺もディーンも笑いをこらえて頬を膨らませながら我慢。
ディーンはまだいい、俺なんか真正面から、うきわ抱えたキャスの進まない泳ぎを見ているんだ。すっげぇシュール、この光景。