SPN

□2nd Anniversary
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思わずぎょっとした僕の前でチェアーに寝そべっていたのは、

「サムって脱いだらすごい系だよね、ガチムチっていうの?」

グラサンをつけて派手な水着を着たトリックスター、

「対してディーンは脱いだら割と細腰なんだよな」

それとチャラチャラした金のネックレスに真っ赤な水着のバルサザール。そして傍らに立っていたのが、

「よく判らないが海の上のディーンはきらきらしている」

いつも通りのトレンチでスーツなキャスだった。

言いたい事はいくらでもあった。落ちぶれ天使というものは楽しそうならどこにでも沸いて出るものなのかとか、人が設置したパラソルの影に図々しく涼んでるのはどういう了見なのかとか。しかし、それより何より、

「おい脱げ」
「……なにを言っているんだ、サミュエル」

「服を脱げと言ったんだ。歩く視覚的不快要素」

夏の海でコートって死にたいのか。浮いてるっていうレベルではなかった。

存在するだけで『何であの人あんな恰好してるんだろう…』っていう視線を集めまくり。

「君に強要されるいわれはない。私はこれを気にいっている」
「そういう問題じゃない。存在したいなら服を脱げ」
「TPOって大切だよ、キャスちゃん。ちょっとストリップするだけだって」
「兄弟が海行くみたいだから俺らも行こうやって言ってたら、アンナからパーカーと水着を預かっただろうが」

じりじりと僕らに包囲されてキャスはうろたえた。

「ディーンも服を着たまま海へ入っている。どう違うのか判らない」
「あれは日焼けと他者からの視線妨害対策だからいいんだよ、とにかく薄着になれよ、暑苦しいって言ってんの!」

バルサザールが僕に水着類を渡しながら、海の方を見た。

「サム、俺はあれにもツッコミたいけどな。見てる分には楽しいけど」

顎をしゃくるバルサザールにつられて海を見ると、Tシャツのまま泳いでいたディーンが、僕らに気づいて砂浜を戻ってくるところだった。

「おー、来てたのかー?お前らどこから沸いて出た?」

うきわをかついだディーンのTシャツは、水でぴったり体にフィット。体のラインどころか色っぽい鎖骨とか腹筋がくっきり浮き出ていた。あまつさえ、乳首もはっきりだ!

全身しっとり濡れて、水滴できらめいているという、吊り橋効果ならぬ砂浜効果炸裂だった。

なんていう事だ…無防備なあの天然ビッチは今や、ビーチ中の熱視線を欲しいままにしている。

「着衣エロ?へたに脱ぐよりエロい。エロ大魔人だなぁ、サム」
「いやー、上級者すぎて俺達もビビったわ」

トリックスターとバルサザールの目に水着とパーカーを押しつけて僕は走った。

「ディーン、今すぐ脱げ!それを脱ぐんだ!」
「女の子追っかけてないのに!?」

たちまち逃げていくディーンを、砂で足をとられながらも追いかけた。

砂浜でディーンと追いかけっこしてキャッキャウフフするのは最高に幸せだと思うけど、こういう場合は別だと思った。
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