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□Bitter?
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「ディーン、顔を上げてくれないか」

「早くそれ持ってどっか行け。いや、やっぱそれ捨てろ」

下を向き続ける彼を覗きこむと、拗ねた幼子のような顔がそこにあった。

「私が君に甘すぎるという意味で、苦い味を選んだのならユニークな趣向だと思う。しかし、何か憎まれ口を言わなければ素直になれないのは君の悪い癖だと…」

「うるせぇな!ただくれてやるだけじゃ、つまんねぇからスパイスとして文句言っただけだ!深い意味は無かったのに変な切り返しする奴が悪いんだ!」

余計な味つけもあったものだと閉口した。

まだ何か機嫌が悪い彼の手を取り、その甲へ唇を落として礼を言う。

「私の為にありがとう、ディーン。とても美味しい」

……どんな毒でも含み続ければ耐性がつくのだと彼は知らないのだろうか。

「ふん、溶かして固めただけだ」
「私の愛は甘いと君は言うが、」

手の甲の上から目線だけを上げながら、

「そもそも君が私に甘いから、私も甘くなったんだ」

密やかに囁いてみたら、彼は今度こそ黙りこむ。

私は、彼の頬に飛んだチョコレートを指で拭い、舐め取って重ねて言った。

「……やはり。とても甘いじゃないか」

すると彼は、ますます下を向いて顔を見せてくれなくなってしまったのだった。





後日。

アンナに、チョコレートをディーンに頼んでくれてありがとうと言ったのだが彼女は不思議そうに言った。

『私、そんな事一言も言った覚え無いけど…っていうか、会いに行ってないしね』

……彼は根回しも甘すぎると思った。
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