Project&Request

□Achwie flchtig, ach wie nichtig
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黒のトレンチコートが風に舞っている下には、緩く結んだネクタイとシャツ、着古したスーツが見えた。

精悍でどこかの俳優ばりに整っている顔は、この世のあらゆる物全てに無関心な風に見えるのに、切れ長の瞳だけがディーンを見据えている。

人に死をもたらす天使というものがいるとしたら、こういう風貌をしているのだろうか。

そう思うほどに、どこか異質な雰囲気を持つ男だった。

「…あー、悪い。知り合いだと勘違いしたんだ」

人違いだったと謝るディーンを見ながら、相手は眉間に皺を寄せた。

「……あんな動作緩慢天使なんかと一緒に見られるとは、俺も大分丸くなっちまったって事なのかもしれないな」
「え?キャスを知ってるのか?」

ディーンの問いに一度口をつぐんでから、男は目線を逸らして答えた。

「…………そういう類の書物を読めば『木曜の守護天使』くらい誰にだって判る」
「そうなんだ…あいつも一応本に載ってるんだな、腐っても天使ってわけか」

ディーンは男の周りをくるくる廻ってみた。
興味津々な顔を、嫌そうに男が見やる。

「……なんだ」
「なぁ、あんたは誰だ?エレンの知り合いなんだろ?」

「それを知る事でお前に得なんか何も無いぞ」
「なんで?狩りの情報交換に役立てるだろ。この店が無くなっちまってからは同業に会うってのも、なかなか無かったからな」

「俺がハンターじゃない可能性だってあるだろう。とにかく、かまうんじゃない」

男は懐から何かを取り出そうとして、目当ての物体がそこに無い事に気づき、小さく毒づいた。

「どう見てもハンターじゃねぇか、あんた。警戒を怠らないし反応も俊敏、何よりその目が狩人の目だ。で、名前は?」
「知らん知らん、散れチェリーボーイ」

「むっ、俺は童貞じゃねぇぞ」
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