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洗脳と無意識と崩壊
ディーンが昼寝をしている横で、彼の弟が屈んで何かをやっている事に気づき、とりあえず声をかけてみた。
「……サミュエル、眠っているディーンの耳元で何を囁いているんだ」
「このスキに兄貴を洗脳しようと思いましてね」
まさか、マインドコントロールまで行おうとするとは考えもしなかった……。
「ほう。私の目の前で良い度胸だ」
「もはや手段は選ばない!……『サム愛してるサム愛してるサム愛してるサム愛してるサム愛してる』……(小声)」
不思議な笑みを浮かべつつ、呪文のように繰り返すサミュエル。実に恐ろしい企みだ。さすが魔王の器候補、神をも恐れないこの思考。あなどれない…慌てて彼の口を塞ごうとした時、ふと気づいた事があった。
よく考えれば、この方法は―。
「う、うーん…うぅー……サム……愛す…サム…アイス…サム…アイス、クリーム」
眉をしかめながら、ごろんごろんと寝返りをうつディーンは、何かを追い払うかのようにバタバタと空中で手をはたいていた。
「こうか は ばつぐんだ!」
高らかに拳を上げ、私を見て、どうだと言わんばかりの(いつ見ても、とてもカンに障る顔だ)サミュエルを一瞥してからディーンの体を揺らした。
「うなされている。よほどの悪夢なのだろう、これは起こしてやるべき」
「あっ、コラ!」
「むにゃ…なんだよ、ゆさぶるなキャス…うるせぇ…」
目をこすりながら彼は起きたが、まだ少しぼんやりしている。サミュエルは私を押しやると、そのまま彼の肩を掴みながら問いかけた。
「まぁ、いい。既に脳へとインプット済みだ。ディーン!僕の事、愛してるよね?」
「え…………」
答えは聞いてない!と言いながら抱きついた弟に対して、ディーンが出した答えはと言うと。
「愛してる?俺、愛してるか?どうだ、キャス」
私に聞かれても困る。
「えっ、なんで疑問形!?」
―そう、この方法は両刃の剣だ。動揺するサミュエルの肩を叩き、私は最初に気づいた事を口にした。
「…ゲシュタルト崩壊」
おめでとう、こうかはばつぐんだ。
「お前、分かってて様子をうかがってたの!?」
「それはさておきディーン、一緒にアイスを食べないか」
「おお!アイス食う夢を見てた気がしたんだ。アレは正夢だったのか」
「さりげなく話題をすり替えた!?お前なんか天使じゃない!悪魔!鬼!外道!」