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変形ロボが欲しいお年頃
※いつも以上にサムがおかしい注意。
兄貴がマイケル・ベイの『トランス・フォーマー』が観たいと言ったので、レンタル店から借りてきて二人で見た。
「なぁ、ちょっと思ったんだけど」
観終わってから、二人がけのソファでポップコーンボウルを抱える兄が振り返った。
「なに?…あ、悪いけど映画の場面とか、物語についての疑問には答えられないよ。僕、ずっと兄貴しか観てなかったからね」
「……はぁ?」
「視姦しほうだいだった」
「に、二時間以上も俺を見てた?」
「うん。そうか…今度からは兄貴を存分に観たい時は、DVDを借りてくればいいんだ…」
「いや、映画観ろよどこが楽しいんだよ」
「ポップコーン食い散らかした口元とか、それを舐めあげるベロとか、思わずくわえたくなる指、それから上半身。それらをじっくりじっとり数十回、目で往復して更に腰から……」
「変態!変態!HENTAI!」
「もっと言えばいいさ、ビッチ!」
勝ち誇った顔で言ってやっていた時、ふと兄貴が何か言おうとしていたのを思い出した。
「え?あぁ、いや大した事じゃねぇんだけど、インパラもトランスフォ」
「却下」
「まだ全部言ってねぇけど!?インパラがトランスフォームしたら最高だって言いたかったんだよ!俺も欲しいよメガトロン!」
「メガトロン手に入れちゃったら世界は破滅です」
以前、僕が『タクシー』を見た時、あれみたいにターボボタンとか付けて、インパラを改造するのはどうかと提案した時は「それは俺のハニーに対する冒涜だ、許せねぇ!」とか怒ったくせに。
「でもカッコイイじゃん、変形ロボとか」
「気持ちは判るけど変形したら乗れないよ?」
僕の指摘に、そこまで考えていなかったようで、ぽかーんと口を開けた様がマジ可愛かった。
「そうだ……乗れないな……」
「兄貴可愛いよ兄貴」
しかし、負けず嫌いの兄は諦めなかった。
「じゃ、じゃあアレだ。しゃべるインパラ」
「ディズニーにもあったね、そんな映画」
「セクシーな女の子の声で…」
「僕の声をあらかじめ吹き込んでおいて、しゃべらせますので、ご安心ください」
一度、車になる体験もしてるし。
ちょっと想像してみる。
『兄貴、もっとシートに全体重預けろよ。そう、力を抜いて…ゆったりと、僕にもたれるんだ』
『エンジンをかけたいの?じゃあ可愛らしく、おねだりしてごらん…ほら、もっと上目づかいで!』
「さ、最高じゃないか」
「おいバカやめろ!お前……俺のハニーを脳内で勝手に汚しやがって!!」
その後。
レンタル返却に出かける時、乗り込んだインパラがなかなかエンジンかからなかったのは、もしかしたら僕達の会話を聞いて不機嫌になったかもしれないとか兄貴が言ったので、兄貴は僕のだからね、とボンネットを叩きながらあとで念を押したのだった。