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□Sad clown〜No trick No life!〜(TD)
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私″という『トリックスター』のトリックを暴き、内面の俺″である『ガブリエル』というタネを白日のもとにさらそうとする。裏側を暴こうとはしないでくれ。

そこに在るものがどれだけ醜いか、知りもしないくせに。

だから俺″は、この男が苦手だ。

「ところで、夢と言うのは潜在意識…無意識下の願望を表すそうじゃないか。本当は神にすがりたかったりするのかな?」
「俺がキリスト像に足向けてんの見ながら、わざわざ聞くか?そんなくだらねえこと」

「じゃあ、何をしていたんだい?」
「別に何も。あの絵を見ながらぼんやりしてただけだ」

すいっと上がった指先に目をやって、思わず顔が固まった。

そこにはボッティチェリの『受胎告知』があった。壁に大きく飾られたそれの中では「私」が膝をつき、白ユリを携えて聖母マリアに手を差しのべている。高貴さが漂うその横顔を、深い嫌悪感と共に眺める。

今すぐ引き裂きたいくらいだ。
例え、描かれたそれが偶像だとしても。

きっとドリアン・グレイは自分の肖像をこんな気持ちで眺めたりしたんじゃないか?

「……あの絵に描かれたような美しい姿とかけ離れていてすまないな。イメージを壊してしまったか?」
「かけ離れてて当然だろ。あれは描いた奴が好きに想像して描いたもんなんだから。それより」

いい加減、その薄っぺらいスマイルを顔にはりつけるの、やめろよ。

そう囁いた声は静かな礼拝堂にやけに大きく、心臓にヒビでも入れられたかのように響いた。

罵倒された方が良いくらい、うんと冷たい声だった。
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