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□青き日々(学園AU)
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アッシュがディーンとトリック・スターを引っぺがし、学生寮の方角からこちらに向かって来る人物へ手を振った。

てとてとと、おぼつかない足取りでやってきたソイツは、カスティエル…通称キャス。制服をへにょっと着こなした上に、何故かくたびれたトレンチコートを着ている。

いつも無表情で何を考えているのかさっぱり僕には判らない。というか、僕達はお互いに今まで接点すら無かった。

クラスこそ同じだが、隅の方でひたすら、ぼーっとしている…率直に言えば影が薄かったし、話す機会も無かった。

が、数ヶ月前。急にディーンがキャスを引っ張ってきて紹介してくれたのだ。

そうして、僕達4人は5人になった。

「ディーン、皆、おはよう」
「おう、キャス。お前またそのコート着てんのか?いいけどさ」

へらっと笑ってキャスと視線を交わすディーンが、なんだかこの2人だけの秘密を共有しているって顔をしていたのがちょっと気に食わない。

そもそも何で、いつ、こいつと仲良くなったのか、ディーンと仲良くなる前…お互いに面識が無い頃は、コイツはトレンチなんか着てなかった気がする。

しかも何考えてるかが判らないってのが一番ネックで、僕はコイツを警戒している。

学生寮暮らしらしいけれど、こんなのとルームメイトなんかやれるヤツが果たしているのだろうか、という心配は杞憂である。


のっしのっし、と擬音がつきそうな音を響かせ、キャスの後ろからやってきたのは大きな強面の黒人。詰襟学ランで、学校の番長として怖がられていたりする男、ウリエルだ。

何でブレザーじゃないのかと質問した者やゴリラみたいだと言った者は全て病院送りになったとの報告もあったりする。

ぎろり、とにらむようにキャスを見て、

「カスティエル、また低能なサル共と慣れ合っているのか」
「マウンテンゴリラに言われてもな……五十歩百歩だと思うぜ」

言い返したディーンとしばらくメンチを切り合ってから彼は目を逸らした。

「かまってられん。私は先に行くぞ、カスティエル」
「ああ、ウリエル。また寮で」

そのまま去って行った。周囲に張りつめていた緊張が、ほぐれてゆく。

口は悪いが本当はおだやかな人なのだとキャスは弁論したが、真偽を考える前に古いクラクション音が鳴らされた。
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