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モーテルで恵方巻を
節分文続き。ボビーがやってきたようです。
「…………コーヒー豆で節分とはな、適当にも程があるぞ、馬鹿もんが」
「えぇ?じゃあ何なら良かったの…」
ぐったりしながら聞き返す僕とは対照的に、
「ボビー、何持ってきたんだ?コレ、何だ?」
「…カリフォルニアロールではないだろうか」
兄とバカ天使くずれは、ボビーが手土産に持ってきたバスケットの中身を興味津々で覗いていた。
「それは恵方巻と言ってな、節分に食うと縁起が良いとされる日本の食いもんだ」
「スシ?」
「むぅ…スシの一種なのかもしれんな。明の方、と呼ばれる方角がその年々にあるんだ…それが一般に『恵方』と呼ばれる。その方向に向かって恵方巻を食うと万事が吉、つまり何でもうまくいくとされている。今年の恵方は丙、南南東らしい」
ボビーの説明をふんふん聴きながら、さっそく兄貴が「恵方巻」とやらを手にとって望遠鏡のようにかざした。
「南南東…ここらへんか」
「…まぁ、そこらへん…待った、まだ食うんじゃない!いいか、その方向で食い終わるまで目を閉じて願いごとをしながら一言も喋らずに食え」
「そうすると願い事が叶うの、ボビー?」
「そう言われているから、お前達にも食わせてやろうと作ってきたんだが、いらんと言うなら俺が食う」
「……あなたも、たいがい素直ではない」
「黙ってろクソッタレ天使が。お前のは本当に材料が余ったから持ってきてやったにすぎないんだぞ」
そうこうしているうちに、ディーンがカプッと食いついた。
「………………」
黒々とした太いモノを、一生懸命くわえたディーンは、ちょっと大きすぎて苦戦しているのか苦しそうに眉をしかめた。
「ちょっ…ボビー、あれ、すごくエロ…」
「ああしまった、お前が変態なのを忘れてた!」
「ボビー・シンガー、あなたはすごいな」
「ああしまった、こっちも変態だったのか!?」
もごもごしながらも目を閉じたまま、懸命に咀嚼する。そのぷっくりした唇のスキマでは白い歯がちらちらとかいま見えて……それがすごく、すごく……
「カ、カメラ、カメラ」
「奴が前かがみで移動しとる間に、食い終われディーン!!早く!!!(ぐいぐい)」
「もっ、むぐ!?……ごっきゅん……な、何すんだよボビー!押しこまれたから願い事うまく願えなかったじゃねぇか!!でも美味かった……」
「では私の分をあげよう、ディーン」
「没収だ、没収!!」
※「2月3日は変態の日」というボビーの脳内に刻まれたトラウマ誕生の瞬間。