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3枚のセーターにまつわる話と参謀の策略

※アンナさんが遅れてお祝いするそうです(去年の安心セーターネタ前提)


ちょっと前、ディーンの誕生日だったらしい。
しょんぼりしてるキャスを慰める役割を私にまで廻さないでよ!とあのニブちんに電話。

どうしてそういう事を事前にリサーチしとかないのか、あとディーンも何で言わないのか。

そういうトコが男って配慮が足りない。

とにもかくにも、誕生日って事ならお祝いしてあげようと思い立ち、モーテルの部屋のドアを叩いた。

「アンナだけど、いるかしら」
「いない!悪いが日をあらためてくれ!」

いないならその声は何なのよ、ディーン。随分な歓迎ねぇ、とドアの前で腕を組んでいれば、

「はいはい、どしたの?アンナ」

と上機嫌な声のサムが扉を開けてくれた。

「どしたも何も…う、うわあ…サムあなた、うわあ」

扉から現れたサムの格好に絶句。

「その反応、ディーンと一緒だ。女の子から見ても感激モノなのかな、えへ」
「手編みのセーター?…まさかあなたが…?…うわあ…しかも『Dean Love』って、うわあ…」

「実はコレ、ペアルックなんです。ほらディーン、出ておいで〜、せっかくだからアンナに見せてよ」
「おいよせやめろバカ、ひっぱるな!離せ!あああアンナ見るな!俺を見ないでくれ!凝視しないで!!」

あきらかに喜んで着てる感じではないけど、ディーンも手編みのセーターを着ていて前面には『Sam Love』の文字。無理やり着せられた感全開。

「着たからもういいだろ、ハイ満足!俺は脱ぐ!アンナも来る時は事前にアポとってくれ!!」
「恥ずかしがっちゃって、着ようとしないんだ。今度は夏用にTシャツプリントとかやってみようかな」

やめて!と叫びながら脱いでいるディーンを背に、

「ところでアンナ」
「わ、私にはセーターとかくれなくていいからね」
「え?いや、そうじゃなくて…君もしかして、ディーンからセーター貰ったりした?」

いやアンタがあげてるじゃないの。

「去年、ディーンがサイズ大きめなセーターを買ってたはずなんだけど、それはどこにやったのかって話になったんだ。でも忘れた、の一点ばりで教えてくれないから、君にでもあげたのかなって」
「あぁ、安心セーター?」

「安心セーター?」

しまった、コレは痛恨のミス。
サムの後ろで『黙ってろ』って感じのジェスチャーをしながらディーンがキッチンへと逃げだした。

「えーと、うん。私がもらったけど」
「男ものでしかもディーンでもブカッとしてるサイズだけどそれでも君がもらったの?ところで若干一名、ちょうど良さげな体格の男が君の知り合いにいるよね」

確信犯!?変わらない笑顔が、ただ怖い。

と、そこでキッチンから悲鳴。

「ディーン!?」

慌てて2人して行ってみれば、

そこには頭からセーターを被った生き物がうごうごしていて、更にその横にキャスが立っていた。

あら、よく見たらアレは安心セーターじゃないの。

「アンナ…来ていたのか」

うごうごしてた生き物はディーンだったようで、キャスが下まで引っ張ったら顔が出た。

「お前いきなり出てきていきなりコレ被せて何がしたいんだ!!心臓に悪いってレベルじゃねーぞ!!」

「……効力が薄れた」
「何だって?」

湯気を出しながら怒るディーンに、どう言えば伝わるのか考えまくってる顔でキャスが言う。

「効力が薄れたと言うのは、つまり君の匂い…というか温もりが薄れた、と言いたかった。補充しようと思って今一度、着てもらっただけだ」
「どいつもこいつも!」
「また薄まったら着てくれ」
「黙れ!」

言い合いをしている2人に、ゆらりと寄りながらサムが銃を出したので、慌ててその横をすり抜け、

「ディーン、私からのプレゼント!はいコレ!!」

スポッと、ディーンの頭にフォックスファーのイヤーマフを装着した。

「じゃじゃーん。ほらサム見なさいな、カワイイよね!ウサギさんの耳つきフードカーディガンも今ならつけちゃう。どうよ暖かいでしょ、ディーン」
「おー、暖かい!!さすがアンナだ、サンキュ」

ウサ耳フードでイヤーマフコーデのディーンを指さしながら、サムへと振り返ればガシッと手を掴まれた。

しかも、すっごい、眉しかめてるー!!

「……アンナ、率直に言う」
「悪ふざけしすぎたごめんお願いだから銃しまって」

「アイツにどんだけ年俸もらってるか知らないが君の言い値で支払う。だから僕の参謀になってください」
「…………え?」

アイツ、と言われて振り向けばセーター握って幸せそうにディーンを見る(顔には出ない)キャスがいた。

あらやだ、引き抜き?

「えーと……困るわ、サム」
「君の才能には前から目を付けていたんだ。我が傘下に来ないかね。決して不自由はさせない…で、いくら貰っているんだね、わが社ではその倍を出そうじゃないか……どうだ、君にとって悪い話では……」

本格的に取引口調になったサムから助けてほしくてキャスを振り向けば、我慢できなくなったのかウサギさんに抱きついたとこだった。



※アンナに「今です!」って、いつか言わせてみたい。
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