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「愛おしい」という気持ちの重み(CD)

「君が恋しかった」

任務から戻って、そう口にすれば、彼は唇を尖らせて不機嫌な顔になった。

「よくもまあ、そんなにぽんぽんと出てくるよな」
「何の事だ」
「歯が浮くような軽いセリフ。会うたびに「恋しかった」だの、「君が愛おしい」だのと毎日、毎日…お前がけっこう軽い男だったのには驚いた」

軽い、と言うのは物理的にという意味なのか、心理的になのか、その双方とも私にはよく判らないが、ともかく彼は何かを誤解している。

「君が思っている以上に、この感情は重いんだ。定期的に吐き出さなければパンクしそうになる」

心が一種の器のようなものならば、私の心は、小さな水瓶。

君への想いが、ぽろぽろと積まれて溜まり、その流れは留まる事を知らず、そして決壊して、すぐにあふれ出ていってしまう。

「だから流れ出ていってしまう前に、君にこうやって伝えているんだ。どんどんあふれるからたくさん伝えなければならない。判るか? 君が思っている以上に苦しいんだ。この気持ちを抱えているのは」

しかし、その重みは苦しくもあるが、何故だか心地よい。

だから、私は。

「いつか君と私の心がつながって、今、私が感じているこの不思議な感覚を君と共有できればいいと思うから「愛しい」と言うんだよ、ディーン」

果たしてこの説明が、うまく彼に伝わったのだろうかと顔をうかがえば、彼は横を向きながらますます眉をしかめて複雑な表情を浮かべていた。

眉間に寄ったしわを、ほぐしてやっていると彼はポツリ、ポツリと言葉を落とした。
「やっぱ、お前の言う事は難しくってわかんねぇ」
「……そうか」
「わざわざ複雑なセリフ回ししなくったって、もっと簡単に説明できる事じゃねぇか」
「複雑だっただろうか」
「そうだよ。てっきり俺はアンナとかサムとかにも言ってんだろくらいにしか思ってなかったぞ。つまりだ、俺の事ばっか考えてるからたくさん「愛しい」って言いたくなるわけで、ならもっと判りやすく俺の事を愛してるから毎日こう言うんだと説明……」
「……ディーン?」
「い、いや、なんでもねぇ」
「ディーン、何故途中で止めた?続きは……」
「なんでもねぇって!あぁ、くそっ!お前がわけわかんない事言いだすから俺まで頭がこんがらがってきた!」

この感情の重みは、思っていた以上に彼に伝わったようだ。赤い顔を隠すように、頭を抱えて困惑する彼が言葉よりもその姿でそれを如実に表していたから、

私は彼に気づかれないよう、少しだけ笑った。
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