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兄貴とキャスと敬老の日の過ごし方

とあるモーテルで、
一人の天使がパンパンと手を打ち鳴らした。

「お前、どこの主人だよ……」
「ザカリア、ちょっと降りて来てくれ」
「何だね、呼んだかな?ところでカスティエル……任務をこなしてすぐディーンの所に入り浸るのは少し控えてくれないか。やぁ、泥棒猫とその弟君」
「泥棒猫ってあんた…使用人みたいに呼ばれて出てくるとは思わなかったぜ。キャス限定なんだろうけど」
「けっこうホイホイ降りて来るもんなんだね、天界の重鎮って。プライドもへったくれも無いね」

「ザカリア、何故ディーンと会うのを控えなければならないんだ。今後は更に増やそうと思っているが」
「おじさんはね、寂しいと死んでしまう生き物なんだ。仕事から帰ってきたらすぐ遊びに行くんじゃない!顔くらい見せなさい!」
「おじいさんだろ。いらん見栄はるなよ」
「じじい無理すんなよ」
「ところで今ディーンに聞いたのだが、今日は老人を敬う日なのだそうだ」
「敬っていない発言のオンパレードだった気がするのは私だけかね。あとスルーしないでくれないか」
「そういう事なので頑張って敬おうと思う」

「……敬う、と言いながら何故、私の膝に乗っているのかな、君は」
「?これが基本的な敬うスタイルだとディーンが」

「ディーン、笑えないんだけど。見てみろよ、爺さんの膝の上に、いい歳した男が乗ってるこの光景の破壊力!僕ちょっとハラハラしてきた」
「なんかおかしいか?親父は毎年喜んでたけどな」
「は?」
「ん?いや、だから俺と親父の敬老の日」
「ま た か よ!ねぇ、敬老の日ってのは老いた人を敬うって書いて敬老であって父の日とは違う!」
「それは俺も言った事あるんだけど、

『ディーン、私はお前よりも年上だ』
『そりゃそうだ、親父だもの』
『ならば私の言いたい事は判るはずだな。さぁ、膝に座れ。いいから早く』

というやりとりの後、『yes.sir』と言ってやるとすごい喜んで椅子になってだな……」

「手を変え品を変え、あの野郎!!兄貴も少しは疑えよ!おかしいって思うだろ、普通!」
「オヤジ、ウソツカナイ」
「刷り込み教育!?」
「頭やら足やら太ももやらを、なでなでさせるのが敬うって事だって言ってた。心底幸せそうだった」
「太ももって!?最早、性的虐待の域ですけど!本当にどうしようもねぇクソ親父っ、あとで霊媒師を探して口寄せさせて文句言う!絶対だ!」

「でもザック、だんだん嬉しそうになってきてんぞ」
「うわぁ、ホントだぁ。でれん、としながらキャスの頭なでまくってるー、でも微動だにしないのが怖いよね、あの孫は」

「さてそろそろ、先ほどディーンに教わった第二段階の敬い方に移ろうと思う」
「ほう、まだ何かあるのかね、カスティエル」
「貴方が逆らえない『魔法のワード』らしい」
「ははは、私を逆らえなくする言葉を、彼が考えられるとは思えないが一応聞かせてもらおうか」

『おじいちゃん、ご本読んで?』(上目遣いで小首傾げながら)

「いいともー!!」(すっごい良い笑顔)

「……兄貴……まさかとは思うけど」
「俺の場合は『ダディ、ご本読んで』って言わされたんだ。狩りの手順の本を嬉々として読んでくれた。霊体が相手の場合は火で燃やして焼き尽くすとか、霊じゃなければ皮をベリベリしてみるとか杭をドスンとか。実地キャンプもやったりしてな」
「いやだよ、そんな殺伐とした敬老の日!」

「初めに、神は天地を創造された。地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を動いていた。神は言われた。「光あれ。」……」

「よりにもよって、あの本選んじゃった!創世記から読み始めたぞ、あの爺!めちゃめちゃ長いよ!」

当然ながら読み途中で追い出されたと言う。
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