SPN

□ディーン取扱説明書(CD)
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「なんだその爆弾でも見てるような顔。今まで私が読んでいたんだから爆弾なわけないぞ」
「悪魔が読むような得体の知れない物を私が欲するわけがないだろう」

そう返答するとだんだん苛立ってきたようで、つま先をトントンと鳴らした。

「ご期待に添えず申し訳ないが、君は欲するだろうと確信できる。だってそれはディーンの取扱説明書だからだ。つまるところ、マニュアル本」


……少し、呆然としてしまった。


「…………何?彼の説明書とはどういう事だ」

「その名のとおりだよ。彼ら兄弟は賞金首にもなってるくらい有名人だ。だから悪魔の間では彼らについての研究もされている。で、それはディーンの取説。君にくれてやる」

「悪魔の言う事など信じ……」

「ともかく読んでみればいいだろ、この頑固野郎!」

とうとう悪魔は、かんしゃくをおこして立ちあがった。卓上のティーカップとポットが一瞬で消え去る。

そしてまた上等そうな上着を掴んで逃げようとしたので、

「待て、私はお前と取引などする気は」
「そうかそうかお前はそんなに私とキスがしたいのか!?」

「無条件でくれると言うのならば預かっておく」

早口で返したら、憤怒の表情で鼻息一つ残して消えてしまった。

かくして、握りしめていた懐のナイフから手を離した私の前には、
『ディーン・ウィンチェスターの生態』という名の本だけが残されたのだった。
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