SPN
□ディーン取扱説明書(CD)
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モーテルの部屋へ行くと、そこには兄弟ではなく小太りの中年男がいた。
高級そうなスーツを着こみ、足を組んで私をちら、と見据える。
「やあ、ウィンチェスター・ボーイズに用事かな?」
優雅に紅茶を飲みながら本を読んでいるその男は、どう見ても悪魔だった。
「……お前は誰だ、サミュエルの『友人』か」
「うーん、『友人』という言葉の響きが、ここまで剣呑に聴こえるなんて驚きだ」
警戒しながら懐のナイフを探り、後退していると男は笑う。
「おいおい、出逢いがしらにナイフを突きつけるなんて乱暴な事はしないでくれよ?私はサムだけじゃなく、ディーンとも『お友達』なんだからな」
ディーンとも……?
「それは嘘だ。彼が悪魔と友達になったりするわけがない」
「残念だが本当だ。なにせ私は良い悪魔だから」
カップを傾けつつ、もう片方の手を差し出して、
「ちなみに彼とは愛車でちょっとしたドライブに連れてってもらうような仲だ」
バカげた事をのたまうので私は視線を外した。
「つれないな。握手ぐらいしろっての…男の嫉妬は見苦しいぞ?」
「何にせよ、この場から立ち去れ。悪魔の言う事に耳など貸さない」
「まったく…じゃあ、友好の意を示す為にこの本をくれてやろう。敵は多くないにこした事はないからな」
テーブルの上を滑ってきた本を、手を出さずに注意しつつ見下ろした。