Project&Request
□blue devils/ encounter・S
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その日、兄弟が辿り着いた街は特に面白みの無い、どこにでもあるような街だった。
インパラと自分達の燃料補給の為だけに立ち寄ったはずが、生真面目な弟がいつものように狩りの情報収集へ出かけてしまったのでディーンは昼からずっとモーテルでゴロゴロとしていた。
ついでに言うと傍にはずっとトレンチコートの男が座っていたがいつもの事なので放っておきながら。
「ところでお前、もう少し外見に気を使ったらどうだ?」
夕方を過ぎる頃。自分がベッドの上でスナック菓子を食べる様を、飽きもせずに眺めていた天使に向かって、ふいにディーンが言った。
「外見?」
椅子に座ったまま、半日ほど動きもせずにディーンを見るだけだった男は、ようやくほんの数ミリ口を動かした。
「とりあえず、そのムサいヒゲ。伸びてきてるぞ。ちくちくしないのか?」
器に気を遣う、という感覚自体がもともと無いカスティエルは、顎に手をやって考える。
「動くのに支障は無いが」
「あのな、ヒゲってのは人によって似合う、似合わないがあるんだよ。ボビーのヒゲは似合ってるから良いが、お前があのくらいまで伸ばしたのを想像すると多分似合わない」
「君が気になるというのなら器を変えようか」
「たまに、ものすげぇアバウトになるよなお前。俺が剃ってやるよ」
ごそごそと取り出した手に、鋭い刃のついた電動剃刀が握られているのを見て、カスティエルは出会ってから初めて、彼の前から逃げたいと少し思った。