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□Black Veil〜Pair in the Dark〜
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彼と共に過ごす時間は、瞬く間に過ぎる。

それは比喩ではなく、本当に一呼吸しただけで数時間は経過したほどに思えるのだ。

街の様々な店を彼と共にひやかして廻っていたら、暮れの陽はすでに地平線へと消えていった。

「イブの街ってのは見てるだけで楽しいな。色々飾ってあったりするし、面白ぇの売ってるし……お、イルミネーションが付き始めたぞ、キャス!」

その街の広場には大きなもみの木があり、色とりどりの電飾が巻きつけられて、それが陽の代わりにこうこうと街を照らし出す。

「キレイだな……ん?何だキャス、俺の事じっと見て」
「確かに綺麗だと思って」
「!?…ち、違うだろ!俺じゃない、ツリー!」
「君が言わんとしている事は分かっている。しかし、このもみの木に見惚れる君の美しさの方が私には魅力的に見えるのだから仕方ない。気にしないでくれ」

「バカだろ、お前!!」

「ああ、君の前では私は愚かになってしまうんだ。恋は私を愚者にするな」
「ぐぅ、は……はずかしい……っ!ってオイ。俺の手をつかんで何、ナチュラルに自分のコートのポケットに入れてんだ?はな…はなせよ!何この強度!まるで石像にがっちりホールドされてるみてぇな!?」

「君の手が冷たいから私の体温で暖めようと思ったんだ」
「前にもやったよな、そういう理由で」
「それに、」
「なんだよ、まだ言い訳があんのか」

「それに……単純に、君と手をつなぎたかった」

つい、勢いで本心を言ってしまって気恥ずかしく、若干目線を外していたら、握った彼の手の体温が一気に高くなった。

驚いて彼を見れば、あらぬ方向を見ているばかりで私を見てくれない。
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