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□天使に祝福を(CD)
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教会の奥のドアを開いてみれば、そこは裏口だったようで建物から出てしまった。

丘の上は崖でもあり、足元が心許ない。

「おい、こっちだ」

闇の中で、灯台の灯りが空を裂く。
照らされた声と共にあったのは、大きな鐘。

「これ、さすがに知ってるよな?」
「アンジェラスの鐘(天使の鐘)だろう」
「ん?名前までは知らねぇ。まあ、ともかく……よっと」
力を入れながら紐を引いたかと思うと、思いきり鐘を鳴らした。
私が唖然としている間にも、二度、三度と鐘が鳴る。

からん、からん、と夜気に混ざる、重圧的なまでの美しい音。
それを、彼が鳴らしていた。重く、低く、心に響かせながら、鐘が鳴る。

「…………けっこう、響くもんだなぁ」
しばらくすると、ディーンは一息ついて手を離した。
「ディーン、一体何のつもりで」
「俺が、お前を祝福してやったんだよ」
「……私を?」
「今日をお前の誕生日にしようって、さっき言っただろ」
「いや、そこまで意味を汲み取れなかった」
「どんくせぇな!教会の鐘ってのは、祝い事の度に鳴らされるだろ。お前には物なんかくれてやっても意味なさそうだし、じゃあ鐘を鳴らしてやろうって思ったんだ」

彼が、私の許まで戻ってきて、見上げながら呟いた。
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