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□天使に祝福を(CD)
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夜の西海岸には海風が涼やかに舞う。

とりあえず近くにあった教会まで飛んでみたがこれでいいのだろうか。
「なんだ、ウォール街のトリニティ教会あたりまで景気良く飛ばしてくれんのかと思ったのに。ケチくせぇなぁ」
「NYが良かったのか」
「冗談だよ、ばか。あ、でもベガスあたりまで飛んでもらえてたら、金もかからず便利か」
「私は君の移動手段ではない」
「金払えってか」
「…………キスをしてくれれば、それで」
「ごめんなさい冗談です」

眼下には西海岸が臨める丘の上の小さな教会で、彼は一体何をしたいと言うのだろう。
逃げるように教会の中へ入って行く彼を追う。

鍵を細長い何かでこじ開けているように見えるのはおそらく私の気のせいだ。

静謐な空気に、ひやりと器を震わせて門をくぐれば、彼はゴシック様式のパイプオルガンにも大きな金のキリスト像にも興味が無いように通りすぎていく。
「ディーン、どこへ」
天使を象った飾りを見上げ、あまりにも自分と違っていて何だか妙な気分だ。
ここでキリストと同等(とはいかないまでも)に敬われている存在であるはずなのに、自分は違うと思った。異質な存在のようで、落ちつけない。

「……それも、そうか」

私が仕えている救世主はキリストではなく、あの我儘な人間なのだから。

納得したら少しだけ、心が熱くなったような気がする。
これを、「誇らしい」と形容するのだろうか。
そうだったら、いい。
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