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□始末におえない、その何気ない一言
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すぱっ、といつものように何も考えていない軽い口調で、
「だって、そうだろ? お前はお前だ。サムにキャスの代わりはできねぇし、キャスにサムの代わりも無理。俺だって俺以外の誰かの代わりになる事はできない。それに、」
もぐもぐとポップコーンを口に運ぶ作業を再開しながら、何気なく。

「それに、キャスもサムもどっちも大事だ。代わりなんていないし、必要ねぇ」

本当に、何気ない、飾り気のない言葉。
呼吸をするうえで必要だっただけ、とでも言うような簡素な発言。
だからこそ心底からのディーンの本心だと言う事が分かった。

応援していたチームが得点を入れて、ディーンが歓声を上げる。
「っしゃ!!やったぞ、おい!見たか、今の……あれ?」
「椅子」の手をほどき、飛び上がって振り返ると、
妙に静まり返っている室内の空気に気づき、首を傾げる。
「何だ?どうしたんだ?」
二人の男はお互いに顔をディーンから背け、その疑問に答えようとしなかった。

その後しばらく、三者間には微妙な空気が漂ったが当事者だけが知らない。


二人を悩ましたのは、
始末におけない、その何気ない一言だと言うことに。
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