SPN

□始末におえない、その何気ない一言
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酒のせいで頬を赤らめながら上機嫌に背後のカスティエルに寄りかかってテレビを見ている兄が、本当に可愛くて仕方ない。しばらくは黙ってその姿を観察していたが、ふいに「椅子兼父親役」の手が強くディーンを抱くのを見咎めて黙ってはいられなかった。
兄への詰問は後回しにしておくとして、ともかく、この光景を何とかしよう……と、サムが二人をひっぺがしに立ち上がった時。
ぽつり、と。
「いいな」
無表情の天使が呟いた。
「いいって何がだ?」
ポップコーンを口へ運ぶ作業を止めて、上目遣いでディーンが聞き返す。
「こういう風に君を腕に抱ける事が、いい」

この、むっつり天使……!と、拳を振り上げようとしたとき、カスティエルの口角がほんの僅か、上がった気がして思わずサムは動きを止めた。
「君の、君たちの父親の代わりに、私はなりたいよ、ディーン」
ぎゅ、とますます強く抱きしめられて、ディーンの手からぽろぽろとポップコーンが落ちる。その切実な色がにじむ声に、サムは少しだけ戸惑ったが、ディーンは反応しなかった。テレビでは試合が佳境に差し掛かっている。ディーンはそれから目を離さずに、
「キャス。お前は親父の代わりにゃ、なれねぇよ」
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