SPN

□始末におえない、その何気ない一言
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「は、はぁ!?」
「何度も言わせんなよ。親父と一緒にポップコーン片手にアメフトを観るってのが」
「父の日の恒例行事だって言うのか!? 僕は一度もそんなの経験した事ないよ!!」
ポップコーンを頬いっぱいに入れながら、ディーンが顔をしかめて呟いた。
「そりゃ、長男の務めだからな。長男以外は白いバラを贈って終わりのイベントだが俺は毎年こうだったぞ。父の日だけは狩りがあった日でも欠かさずに一緒に……」
「長男の務めって何だよ!?長男でもバラ贈れば終わりだよ!」
「なんだ、知らないのか? 余所の家でも長男はこうやって、親父と過ごすもんらしいぞ」
得意げな顔の兄に、サムはこんこんと説教をしたい気分だった。
自分の知らないところで、兄が父親に騙されていた……とカルチャーショック。
「どの家でも父の日の長男は父親の膝の間に座ってテレビ観戦するって信じてるの!?」
「信じるも何も親父は確かにそう言ったぞ。小さい頃は膝の上だったけどな」
本気だ!本気で刷り込み教育されてる!と、若干感じる絶望感。
「……いつまで……、ねぇ、いつまでそれやってたの?」
「え? 親父が失踪してお前と旅を始めるまで毎年。やらないとスネるから」
「あ、あの、クソ親父ぃぃぃぃぃ!!!」
思わず頭を抱えて叫びながら、サムはジョンの魂をどうにか呼び出して怒鳴りたい衝動に駆られた。ジョンの言うことなら何でも信じてしまっていた兄も兄だが、それを利用して溺愛する長男に好き放題していたジョンへの怒りが行き所なく溜まるのを感じる。
このぶんだと自分の知らない、「父の日」以外の「何か」がまだまだありそうな気がしてならなかった。
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