SPN

□午後十一時の攻防戦(SD)
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すると、振動で気づいたのか、ゆっくりと、ディーンのヘイゼルグリーンの瞳が開かれた。
「ぅ……ん……ァ……ム……?」
「ディーン……」
とろん、とした目つきのディーンがとてつもなく可愛くて、もうこれは良いんだよね、誘われてるんだよね、と顔を近づけようとした時。

「サ……ム……と、キ……ャス……?」

思考が、止まった。
え? 今、なんて?
なんで、そこで天使の名前が出て……、……え!?
まさか、まさかとは思いながらも、ぎこちなく、おそるおそる後ろを振り向いた時、そこに無表情のくたびれたトレンチコート男が立っていた。
「やぁ、ディーン」
ベッドに下着一枚で寝転がるディーンと、更にその上にまたがる僕を、恐ろしいまでの鉄面皮が見ていたと知った時の僕の気持ちは誰にも分かるまい。

だって、気配も音もまるで無く、存在感すら判らなかった!!

「……い、いつから、そこにいたの?」
「いつからとは?」
無表情な天使、カスティエルはぼんやりと歯ブラシと僕の顔を交互に見て聞く。
「……ど、どこから、どのくらい前から見てたの?」「君が『ディーン、せめて歯磨きしよう。でも寝てるみたいだから、仕方なく僕がやってあげるね。まったく、仕方ないなぁ』と言いながら息を荒げつつ不思議な笑い声を上げてディーンの歯を磨き始めた時からだが」
「素直に、最初からって言えよ、この性悪!」
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