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□午後十一時の攻防戦(SD)
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「ディーン、せめて歯磨きしよう。でも寝てるみたいだから、仕方なく僕がやってあげるね。まったく、仕方ないなぁ」
声が上ずってるのも顔がどうしても笑顔になってしまっているのも、仕方ない事なのだ。

微妙に兄から焦点をずらしながら、そぅっと唇の隙間から歯ブラシを入れる。
「ん……」
安心しきった兄は、なかなか起きないので全然大丈夫だと確信がある。僅かに顎を固定して、ゆっくりと歯列をなぞるように動かしてゆく。
「ん……く……」
……あれ? そう言えば、あの記事の続きには何が書いてあったかなとぼんやり考えながらも、至福の歯磨きを続けた。

「…………」
―始めてから、数分が経ったあと、僕は記事の内容を思い出した。
……嫌と言うほどに実感した、と言うほうが正しいのかもしれない。

記事によると、自分でやる時には気がつかないが他人にされる歯磨きというものは、とてつもなく気持ちが良いのだそうだ。身体の内面を触られると言う事は、身体の外側を触られるよりも……快感が生じる。
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