SPN
□午後十一時の攻防戦(SD)
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もう無理。もう限界。今すぐ抱きつきたい。
キスしたい。
でも……でも、もし拒まれたら。嫌われたら?
そうなったら、僕はもう生きていけない。
数分間、呻きながら理性と欲求の狭間を漂った時、ふと先日ラップトップで読んだ記事を、おぼろげに思い出した。
偉い人は言いました。ケーキが食べれないならお菓子を食べればいいじゃない。
どちらも選べないなら、妥協策をとればいいんじゃない?
『寝ている人への悪戯には、歯磨きをしてあげるのが最適です』
たまたま目についた記事にそんな事が書かれてあった。本能で行動する決心をするには度胸が無く、かと言ってこのままだと静かに眠れそうにもない。
なら、キスする代わりに少しだけでも兄に触れられたらいいな、というちっぽけな願望と「兄に歯磨きをしてみたい」という好奇心を叶えさせてもらえばいいじゃないか。
お互いに妥協することって必要だと思う。
服を着せてあげるには辛抱できそうにないし、歯磨きくらいならいいでしょう?
と、いうわけで現在。僕は歯ブラシと歯磨き粉を持って立っている。
……ちょっと、自分でも欲望を抑える為に相当切羽詰まっている気はする。