SPN
□疎ましい彼の声(CD)
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公園のベンチに腰かけ、
もう何度目か判らない溜め息を吐いた。天気はいいのに人はあまりいなくて、リラックスしかけた時。
「やぁ、ディーン」
目の前にトレンチコートの男が急に現れて挨拶したので、俺はさっきより深い溜め息をこれみよがしに吐いてみる。
見なかった事にしよう。
聞こえなかった事にしよう。そう決めて反応しないでいると、しばらく立ったままだった男はベンチをノックした。
トントン、トントン。
俺の横のスペースへ、
トントン、トントン。
俺の顔を見上げながら、
トントン、トントン。
延々とベンチへ拳を降ろしてノック。
「――っ!あぁ、もうっ!それは一体、なんのマネだよ!?」
はい、俺の負け。
「アンナに『ノック』の意味を教わってきた」
「その褒めてほしそうな顔はなんだ?ノックはドアにやるもんだ」
「そうか。分かった」
そう言いながら俺の許可も得ずに隣へ座るな、帰れ。