SPN
□O Come, All Ye Faithful!
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「じんぐるへーる、じんぐるへーる」
「ここが地獄だと……そう言いたいのか、ディーン」
キッチンのテーブルは、私が作成したクリスマスケーキでいっぱいになっていた。クリスマスパーティーの準備である。
サムとバルサザールはパーティーの為の買い出しに行き、私はディーンを見ていろと言われた。ディーンは、シカの角が前面から突き出たアグリーセーターを着て、クリスマスケーキのチラシを朝からずっと丹念に眺めている。
だから私は、彼の為にケーキを作ろうと決意したのだった。レシピ本を熟読し、昼過ぎにはホールケーキのスポンジ生地をなんとか作れるようになった私だったが、問題はデコレーション作業だった。
ぽんぽんと丸く絞られるはずのクリームは、どうしても力が入ってしまい、
「べんぴ、みっかめ」
へにょっとくだをまき、側面で流麗な波のラインを描くはずだったクリームは、
「どうしてよこに、まきぐそつけたの?」
総評として「う〇こケーキ」とまで言われてしまい、悲しみのあまり、その口に生クリームの絞り袋を突っこんでしまった。
ちゅっちゅっとクリームを吸う音を隣で聞きながら、テーブルに広がった失敗作達をどうにかしなければ、と思っていた。
「ぜんぶ、おれに?」
ちゅっちゅしながら期待のまなざしが向けられたが、
「いや、君には渡せない。健康的にも良くないので」
「これくらい、ひとのみだぞ」
こんなちょっとでどうにかなる程ヤワではないと主張するディーン。
しかし、ホールケーキ三台は与えすぎだろう。サムが烈火のごとく怒るのが目に見えていた。どうやら自分にはくれないようだと察したディーンは、
「おれにくれねーなら、さみたちにもあげちゃだめ」
頬をぷくんと膨らませ、面白くなさそうに言った。
「しかし、そうなるとまたボビー・シンガーに渡す他ないな」
実は彼が見に来る前に生地の失敗作を既に数台渡してあることを説明すると、「けっとうち、やばいのでだめ」と首を横に振られた。
そう、本人にも「じわじわ殺す気だな」と拳銃まで向けられたのだ。
ではどうしようと悩んでいたら、心当たりがあるとディーンが言った。