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□破滅的で、魅惑的なその一言(ノヴァスミ)
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【MP36無配・ノヴァスミ】

〇『破滅的で、魅惑的なその一言』

サンドーバーからほど近い、オーガニックカフェは、ディーン・スミスの行きつけの店だった。朝、通りがかりに寄ってみたり、昼休みに行ったりしているうち、カフェの店員のベニーが話しかけてくるようになった。

人見知りの傾向のあるディーンは、最初こそ声をかけられて困った顔をしていたが、温和で相手のペースに合わせる事が得意なベニーは、ディーンが話したくなる時までいつもじっと待ってくれていたので、徐々に二人は友人となった。

今朝も、コーヒーとランチ用のサラダを買いに立ち寄ったディーンを、ベニーは優しく迎えた。

「なるほど。相手が本気かどうか、いまいち判らないと、そういう事だな?」

ベニーはコーヒーを淹れながら、ディーンの個人的な話を聞いていた。

「道理で、最近悩ましげにしていると思った。聞いてよかったよ、てっきり深刻な悩みを抱えているのかと」
「聞き出しておいて、何だその言い方は。これでも割と深刻なんだ、ベニー。どうもパーソナルスペースが近い人なのか、けっこうグイグイくるというか、プライベートでも色々と誘われたりするんだけど、本気なのか、僕の反応を見て楽しんでいるのか、よく判らない人なんだよ。ちょっと苦手だ」

「いいじゃないか、誘いに乗れば……まあ、それが出来ていれば、苦労はしていないな。お前、顔は遊んでいそうなのに、実はウブというか、奥手なタイプだから。はは、すまんすまん。怒るなよ、褒めたんだ。で、今日、その相手に会う予定なのか」
「全く、こっちは本気で困っているのに!」

「悪かった。嫉妬したんだよ、お前をそんなに悩ませてる罪深い相手にな」

ベニーは、ウインクしてそう言うと、コーヒーを差し出してレジから身を乗り出した。

「そうだな。こういう、あしらい方はどうだ?」

顔を寄せたディーンに、ベニーは楽しそうな顔で悪だくみを話し始めた――。
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