SPN

□Sour remark(サンプル)
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※全四話構成です。後半二編はホラーという謎の組み合わせ。「物語」をテーマに書いてありますが原作を知らなくても読めます。


1、『人魚姫』バルサザール

※バルサザールと兄貴がだべるだけの小話。

スーパーへ寄る途中、道端で愛を説く男の声に、ディーンはふと振り返った。

曰く、神の愛は常に平等に、人々へ与えられていると云う。

均等に、人々の頭上へ降り注ぐその愛はこの世の中で一番美しいのだと。

勿論、この手の説法者は珍しくないし、その前を通過する人々は大抵、気にもかけないが、その中で一人、ぴたりと男の前で足を止めている男がいた。

「神の愛が美しいだと? そりゃ、とんだ妄言だ。おめでてぇ野郎だな、オイ」

無造作なオールバックをがしがしと掻きながら、人をバカにしたように肩をすくめる長身の後ろ姿には見覚えがある。

「それにいつ、神から愛を与えられたって思ったんだ? 均等な愛なんかあるもんか」

鼻で笑うその背に向かってディーンは声を投げた。

「おーい、バルサザール!」

しかし相手は男から目を離さず、こちらを見もしない。

「神は絶対不変な存在だ、だから愛も均等に私達にお与えになる事ができるのだ。愛は美しいものだ!お前は文学を読んだ事が無いのか?美しい恋の物語を読んだ事は!?」

自分の話を否定され、激昂した男がバルサザールに詰め寄った。

その様子を見てディーンはバルサザールの肩を掴み、引っぱったが、彼は鼻を鳴らし、嘲笑した。

「学はあまり無いがな、美しい愛の話なんぞ、お目にかかった事がありゃしねえ。略奪、不倫、嫉妬、愛憎。その要素が無い物語は愛を語ってなんかいやしないぜ。愛ほど醜いもんは無い。お前、こんな常識も知らないのか、童貞ここに極まれりだな!」
「そのへんにしとけ、このいじめっ子!」

放っておいたら延々と続きそうだった憎まれ口に割って入ったディーンの声を聞き、やっと彼はニヤリと笑った。
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