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兄貴プリンダンス
※牧瀬プリンダンスを兄貴にやってもらいたかったけど字にするとよく判らなくなりました(トリッキーさんとクラさんは仲良いと思うと何度でも主張)
「天下のトリックスターともあろう者が、最近は生ぬるくなったもんだな」
私がそう指摘してやると、トリックスターはデカいアイスの箱を抱えながらスプーンを口にくわえて間の抜けた顔をした。
「いきなり何を言うんだい、クラウリー」
「私の友人とは思えない体たらくだと言ったんだ。お前、ディーンに熱を上げるようになってから全体的にだらしなさすぎるぞ」
「そんな事ないと思うけど…っていうか、ヒゲ生やしたクマさんみたいなのに夢中になってるヤツに言われても説得力ないよね」
「おいボビーをディスるのはお前であろうと許さないぞ!…なぁ、本当にしっかりしろ。あいつのどこがいい?ほだされて、メロメロになってるなんて、お前らしくないじゃないか。今のお前はつまらないぞ」
これでも心配してやっているというのに、トリックスターは、メロメロになってなんかないし…と往生際悪く反論した。
「私がディーンにメロメロとか、そんなわけがないだろう。あっちが私にお熱だと言うならまぁ、やぶさかではないって言うか、素直じゃないからなかなかそう言いださないし待ってやろうかなっていうスタンスでいるだけで…なんだいその冷やかな目。お前だってあいつを前にしたら、私の気持ちが判るって!」
何を判れと言うんだ!
机を叩いて反論しようとしたら、眉をしかめたディーンが寄ってきた。
「おい!お前らのどっちか俺のプリン食っただろ!!」
右手に空のプリンカップ、左手にラップのような物を持って言う。
「ああ、それならさっき確かにいただいたさ。今ちょっと説教中なんだからあっち行ってろ」
手ではらいながら私がそう返したら、怒り始めた。
「ふざけんな!これボビーが作ってくれたやつだったのに!!」
「どうりでボビーの匂いがすると思った。カラメルソースはもう少し甘めだと私の好みだと伝えといてやれ」
「プリンにかけてたラップに俺の名前が書いてあっただろ!!だいたい、なんでお前らは俺とサムがとるモーテルの部屋でダベるんだよ、よそに行けよ!」
「はぁ〜?ラップ?判るわけないだろうが…そういう銘柄かと思った。まったく器の小さい男だな」
見れば確かに左手のラップには『ディーン』と書いてあるようだったが知るかそんなもの。
するとディーンは、むすっとした顔で両手をぴらぴら動かして、ますます怒る。
「銘柄なわけないだろバカ!!」
不思議な踊りのように手をぱたぱたさせていた。
「謝るくらいしろよ!」
次第に頬も、熱したマシュマロのように膨らませ始める。ぷくぅーっと。
「ディーン、プリンじゃないけどこのアイスも美味いぞ。あーん」
トリックスターの差し出したスプーンをくわえて、頬を動かしながらも踊る。
「おれの、プ、リ、ン!!(もぐもぐぷくぅ)」
ぴらぴらぱたぱたと動きながらも頬をふくらませる姿は、なんだかハムスターのようだ……
「…いい歳してお前…はぁ、判った判った。私が悪かったー悪うございましたねー」
「ごめんですんだらな、」
「ディーン、ほらもう一口」
「(もぐ)FBIなんか(むぐ)いらねぇんだよ!!(ぷくっ)」
ぱたぱたぱたぱたと、本人は真剣なんだろうが自覚なしの小動物じみた行動を前に、私は頬杖をついた。
「うまいだろう、ディーン。もっとやろうじゃないか」
「うまい!!(もぐもぐ)」
ぱたぱたするディーンを見ながら、トリックスターが目を細めて言った。
「な?ほだされたとかそういう問題じゃないんだ。不思議と和んでしまうっていうかね、判るだろう?」
「……確かになぁ」
確かに、これを前にしたらひたすら構いたくなる、そんな気持ちになるのは確実でなんとも言えなくなってしまった自分が悔しかった。
ディーンの頬をぷすっと指してみたら、空気の抜ける音と共に自分の肩の力まで抜けてしまったので、今日はもう全てがどうでもよくなってしまった。
※今日も兄貴が可愛いせいで、世界は平和です。